新品種で農家救え 平塚生まれの青ウメ「翠豊」 4月には見学会も

安定した収穫量を誇る新品種の翠豊=平塚市上吉沢の県農業技術センター

 天候などに左右されず、安定した収穫量が見込める青ウメを果樹農家に提供しようと、神奈川県農業技術センター(平塚市上吉沢)は、「翠豊(すいほう)」と名付けた新品種の育成に成功した。県内では近年、青ウメの収穫量が減少し、かねて品種改良への要望が上がっていた。4月には生産者を対象に翠豊の見学会を催すなど新品種の導入を進める。

 梅酒や梅ジャム、シロップなどに使われる青ウメは、県内では小田原市の曽我梅林を筆頭に「白加賀」が主な品種として栽培されてきた。ただ、近年は気候変動で実がなりづらく、収穫量は減少しているという。

 2020年に同センター内で育てた青ウメの収穫量(千平方メートル当たり)は、白加賀が607キログラム、翠豊は4倍以上の2704キログラムに上った。同センター生産技術部果樹花き研究課技師の伊藤彰倫さんは「白加賀がこれだけ取れないのは厳しい」と指摘。生産現場からは「全然取れない」と嘆きの声も聞かれるという。

 同センターでは、品種改良に向けた研究を1997年に開始。自然交雑で得た78個のウメの中から1個体を選抜して2020年に有望品種として育成を完了し、21年3月に種苗法に基づく品種登録出願を行った。

 翠豊は実の大きさも1個30グラム前後で白加賀と同程度。味も「(白加賀と)遜色ない」(同センター)という。ウメの多くは単独の樹種では受粉せず、花を行き交う蜜蜂の交配で結実するとされる。翠豊の収穫量が安定したのは、開花盛期が他の品種と重なっていることが要因とみられる。

 4月には、県内の果樹生産者で組織する県果樹組合連合会の会員らを招いて見学会を開き、栽培の意向などを確認しながら生産現場への導入を推進する。同センターの藤代岳雄生産技術部長は「まずは生産者に翠豊を知ってもらい、普及していきたい」と期待を寄せている。

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