【MLB】CY賞でも最低賃金レベルの年俸7000万円… ベテラン選手が労使交渉で戦うワケ

ブルワーズのコービン・バーンズ【写真:Getty Images】

コービン・バーンズは「MLB労使交渉のシンボル」とされる

昨年サイ・ヤング賞に輝いた球界屈指の投手コービン・バーンズ。ロックアウトが続くメジャーリーグだが、米全国紙「USAトゥデイ」は、27歳の右腕を「MLB労使交渉のシンボル」とした。

機構側と選手会側の今回の交渉で重要なのは、FA資格や、高額年俸の選手をさらに金持ちにさせることではなく、若い選手たちが正当に扱われること。それは、マイナー時代にほとんど稼げず、メジャーに昇格してスターになっても最低年俸レベルの金額しかもらえない選手たちを指す。それがバーンズのような選手だという。

昨季11勝5敗、ナ・リーグトップの防御率2.43、234奪三振に対して与四球は34のみ。ファングラフスの試算したWARを元にすれば、バーンズは5980万ドル(約69億円)の価値があったことになる。また、2020年の成績も含めば、この2年間で7920万ドル(約91億円)に値する成績だったことになる。しかし昨季の年俸は60万8000ドル(約7000万円)。最低年俸より3万8500ドル(約440万円)多いだけだ。

バーンズは「誰だってシャーザーやコールのような額をもらいたい。だが実際(それだけもらっている選手)はあまりいない。マイナーで5、6年歯を食いしばって頑張って、24、5歳でメジャーデビューして、そのあと最低年俸ぐらいの金額で3年間チームの支配下に置かれる、そういうケースがほとんどだ。そういう若い選手が昇格してスーパースターになれたら、それなりの金額をもらえるべきだ」と話した。

大卒選手はFA権を得るころには30歳を迎える

機構側は市場価値に見合った金額を選手たちがもらえるように、最低年俸アップや年俸調停の権利を得る前の選手たちへのボーナスプール増額には同意しているものの、金額については依然選手会との隔たりが大きいままだ。

昨年の開幕ロースターに登録された全902人の選手のうち、半分近くの417人が年俸100万ドル(約1億1500万円)未満だった。また、MLB選手の平均年俸は2017年比で6.4%ダウン。バーンズやメッツのピート・アロンソのように大学を経てプロ入りし、すでに27歳の選手たちには、FA権を得るころには30歳と特に不利になる。昨季ナ・リーグでルーキー・オブ・ザ・イヤーに選出されたジョナサン・インディアも大卒なため、FAになるころには30歳を迎えてしまうことになる。

バーンズは「アロンソやインディアはスーパースターになれる可能性のある選手。だがそれに見合った額をもらえていない。チーム側が高額を支払わなくてはならなくなるギリギリまで、サービスタイムを操作するからだ」と指摘。「だからベテランの人たちが新労使協定のために戦ってくれているのはとてもありがたい。シャーザーやコール、そしてリンドーアやトラウトは、野球がさらによくなるよう、今後の世代のために戦っている」と感謝すると「とにかく全員にとって公正な協定でないとならない」と力強く結んだ。(Full-Count編集部)

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