【追う!マイ・カナガワ】ロシア留学中のバレリーナがSOS ウラジオストクで足止め 「日本政府動いて」

経由地の空港で足止めされた日本人留学生たちの荷物。帰国寸前で空路が断たれた=6日午前8時(現地時間)、ロシア・ウラジオストク国際空港(志賀さん提供)

 「ロシア留学中の親戚の子が帰国できません。日本政府は動いてくれないのでしょうか」。横浜市の女性から「追う! マイ・カナガワ」取材班にSOSが届いた。ウラジオストクで足止めされている女子留学生にコンタクトを取った。

 経由地で空路が断たれたのは帰国寸前だった。ロシア国立のバレエ学校に通う日本人留学生の男女18人が7日現在(日本時間)、経由地のウラジオストクで足止めに遭い、現地のホテルに身を寄せている。多くが未成年で最年少は13歳。電話取材に応じてくれた横浜市港南区出身の志賀有季乃さん(16)は「いつ危険な状況になるかわからない。すぐに日本に帰りたい」と不安を口にした。

◆出発30分前に行き先変更

 ウクライナ侵攻を受けてロシア国内の緊張も高まる中、留学生たちは帰国を決断。成田着のチケットを手に今月5日夜(現地時間)に在住する西シベリア・ノボシビルスクを出発する際、思わぬ知らせが届いた。

 「急きょ日本まで渡航ができなくなりました。ウラジオストクが終着点です」。ロシアは5日、中東など一部を除いて外国に向かう便の運行を6日以降停止すると発表したばかりだった。ただアナウンスは出発のわずか30分前。とどまるか、搭乗するか。短時間で決断するしかなかった。

 ウラジオストクに降り立つと、上級生が現地の劇場に所属する日本人団員を頼り、18人分の宿泊先を確保してくれた。現地の総領事館の支援も受け、今はホテル生活を送っている。

◆カードもいつまで使えるか

 先行きは不透明で不安は尽きない。買い物などでクレジットカードを利用しているが、米大手がロシアでの業務を相次いで停止。志賀さんは「カードもインターネットもいつまで利用できるかわらかない。家族とも連絡が取れなくなるのでは」と声を落とした。

 バレエダンサーとして活躍することを夢見る志賀さんは昨年9月にロシアに留学。週6日のレッスンで「今までにない濃い時間」を送っていた。学校には日本人生徒が約30人在籍しているが、校長の「ロシアは安全」との言葉に、とどまることを決めた人もいた。「学校のみんなも元気でいてくれたら…」と志賀さん。横浜の母も「とにかく無事に帰ってきてほしい。(政府の)チャーター便などがあれば…」と祈るように話す。

 在ウラジオストク日本総領事館は「政府から邦人援助のために専用機を飛ばす情報は上がっていない。民間の臨時便に頼りたいが実現していない」とし、モスクワ発中東経由での帰国便を提案することも視野に入れる。外務省ロシア課も「対策を検討している」と話すにとどめた。

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