情勢変化を感じさせる金正恩総書記の演説 労働党の基層組織、「火力部隊」から「施工単位」へ

「党大会が設計機関であるなら、初級党は施工単位である…」

朝鮮労働党第2回初級党書記大会(2月末)を指導した金正恩総書記はこう述べながら、初級党の責任者である書記の役割を重視していると強調した。

朝鮮労働党第2回初級党書記大会を指導する金正恩総書記(朝鮮中央通信)

朝鮮労働党の基層組織である初級党は各地の工場や企業所、農場、各機関に張り巡らされており、党の決定を直接執行する。

初級党責任者たちの大会は2016年12月に初めて開催され、総書記はこの大会も指導。当時は初級党を「砲兵に例えるなら火力中隊だ」と説いた。

朝鮮では何かと軍事用語が用いられることが多々あるが、16年の大会では単に火力中隊に例えただけではない。

大会では、軍需工業部門の初級党組織に先端武装装備の開発を促し、さらに、すべての初級党組織に次のような指示をしている。

「こんにちの情勢を清平な世界と見る安易な観点をなくし、有事には即時、戦時体制に移って全民抗戦を繰り広げられるよう万端な戦闘動員準備をするべきだ…」

翌年の17年はトランプ米大統領が国連演説で朝鮮の「完全破壊」に言及するなど朝鮮半島情勢が激化した。

いま思うと朝鮮は相当の覚悟で朝米対決に臨み、そして強大な核抑止力を手に入れた。

2017年11月29日、ICBM「火星-15」型試射の成功により国家核武力の完成が宣言された。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

18年4月には党中央委員会総会で経済重視の新たな政策を打ち出した。

その後、軍事基地に大型温室農場を建設するなど民需転換が進む。

今回の初級党書記大会で党大会と初級党の役割が、一転して建設に例えられた。

総書記の演説は朝鮮を取りまく情勢の変化を感じさせる。

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