“訳あり”で激安だった「ビジネスホテルみかど」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(10)】

新型コロナの感染リスクも落ち着いてきた昨今、オミクロン株の今後は予断を許さないものの、街の賑やかさはある程度戻ってきた。僕は車移動が多く、電車に乗る機会はめったにないが、友人曰く「東京の通勤ラッシュはコロナ禍以前に戻ってしまった(泣)」そう。

テレワーク、リモートワークが浸透しつつあったのを、今後も活かしつつ社会活動を図ればいいのに、と個人的には思うが、各企業とも諸事情があるのだろう。なかなか一筋縄ではいかない世の中だ。

12月に、また大阪へと向かった。成田空港から関西空港のLCCでの往復だ。前回同様、往路がジェットスターで5,030円、復路がピーチで4,860円。往復で9,890円。凄い時代になったものだ。

もっとも、JALやANAといったメガ・キャリアに比べて欠航の可能性、そしてリカバリーの困難さは相当のもの。実際に僕も成田発熊本行きのLCCが熊本空港に降りられず、いわゆるタッチアンドゴーで引き返したこともある。その後、どうしても当日中に熊本入りしたくて、成田空港から羽田空港まで電車で移動し、ANAの夜の便で熊本空港に向かったゆえ、相当の出費になってしまった。そんなリスクもまた良い経験と思える僕のようなタイプなら、LCCはうってつけだろう。

機内は往路がほぼ満席、復路が約7割の搭乗率。今はまだ予約が取りやすいが、今後は以前のように争奪戦になるかもしれない。

また関空を使用したのは和歌山に用事があったというのもあるが、それにしても定宿的な場所である大阪・西成に向かうのにも便利だ。

今回は思うところあって当日に予約を行った。いわゆる”当日割”的な安価なタイプが発見できないか?と思ったから。残念ながら西成のホテルでは見つけられなかったが、通常よりも相当低価格な部屋を発見した。それが「ビジネスホテルみかど」の1,420円(税込)。「みかど」は旧館と新館があり、旧館だと通常2,100円程度だ。

よく説明書きを見れば、「【訳アリ】旧館シングル和室(騒音あり|部屋小さい)(wakeari_jp)×1部屋 当客室はトイレ、EVの使用音が反響し騒音が発生します。また、部屋も手狭の約3畳です。」という表記があった。

以前に宿泊した別のホテルのように、「妙に安い=大量の虫の発生」は、さすがにもう勘弁してほしいが、今回は「音」である。

幸いに、酔って帰宅して寝るだけなのと、相当に寝つきが良いという性格、そして耳栓も所持しているので何とかなるだろうと思い、ここに決めた。

正面エントランスを入れば左側にフロントがあった。コロナ対策なのだろう、ちょうど玄関中央にステンレス製の棚があり、フロント側の左が入室用、右が退室用というように導線が分けられていた。

エンドランスの右側には、ちょっとしたフリースペース(コモンズエリア)があり、長期滞在者の方々だろうか、数人が談笑をしていた。漫画本や絵本などもあり、一度に5冊まで利用できるそう。フロントスタッフに言えば部屋に持ち込むことも可能のようだ。その他、レンタサイクルも借りられるそう。

チェックインを済ませ、キーを受け取る。ふと見るとバスタオルなどが配置されていたが、「全て部屋に置いてある」とのこと。2泊目以降は、こちらか持っていくシステムだ。

1階の廊下にはタバコや清涼飲料水の自動販売機、そして奥にはコインランドリー。

今回の部屋は4階の420号室。エレベーターで上がり、降りれば、整然と部屋が連なっている。

ドキドキしながらキーを開ければ、通常は奥に長いスタイルだが、横に長いという、ある意味やや変形型にちょっと驚いたが、入店してしまえば同じ3畳一間。案外と清潔感があり、良い意味で拍子抜けした。

しかも、コンパクトだがテーブルもあり、テレビ、冷蔵庫も。浴衣やタオル、バスタオル、歯ブラシまで揃い、さながら和風旅館のよう。使い捨てスリッパまである。そして、綺麗なエアコンまで。パスワードを入力するシステムのフリーWi-Fiも問題なく使用できた。

ここまで高評価だと、逆に騒音がいかほどのものかという不安まで感じた(笑)。

さて、恒例の館内探検である。

フロアには電子レンジとオーブントースターまであり、リノベーションされた感の洗面所にはウォシュレット付きのトイレがあった。

1階には大浴場とシャワールーム3か所が。新館には各階にシャワールームがある。

大浴場は男女入れ替え制。男性が午後3時から10時までと午前0時半から9時半まで、女性が午後10時半から午前0時までと午前10時半から正午まで。

大浴場は翌朝に入ることにして、シャワールームを利用した。

ゆったりとした作りで、清潔感もあり、申し分ない。高品質と思われるシャンプーやリンス、ボディソープも完備。まさに「スッキリ」である。

活況が戻ってきた大阪である。部屋呑みも良いが、せっかくなので僕は居酒屋へと向かった。ホテルは午前1時にシャッターが閉まるが、隣のドアから暗証番号などを入力すれば出入り自由。安心して出かけた。

大阪に来ることもしょっちゅうな僕は、十数年来の友人も多い。その中で、大阪の居酒屋系にとても強い友人と、久々に再会した。

向かった先は西成のある動物園前駅から地下鉄堺筋線で2つめの日本橋駅。そこには地下街、なんばウォークがある。その一番、日本橋駅寄りの店舗「初かすみ酒房日本橋店」へ。

大阪的な紅生姜天のほか、日替わりメニューには赤いウインナーや、たこせん目玉焼きなどチープで面白そうなメニューもあり、楽しめた。友人曰く、こちらもコロナ禍は9月30日まで休業していたそう。今は、かなり客足も戻ってきているようで、ほっとした。

その後、ホテルへ戻り、例の“騒音”にドキドキしながら眠りについたが、特に気になるような音は無かった。ホテルの張り紙には「泥酔者お断り」的な文字があったが、もしかしたら少々、泥酔していたかもしれない(汗)。なにはともあれ、爽やかな朝が、そこにあった。

「みかど」の素晴らしさは、まだある。なんとチェックアウトが午後1時。とはいえ男性の大浴場は朝9時半までなので、8時半ごろ向かう。

先客は1名。6名が一度に洗える広さだ。しかもサウナまである。僕はゆったりとした湯船に、まさにゆったりと浸かり、そして部屋に戻り、時間を気にすることなく身支度をし、昼ごろにチェックアウトした。

今回も素敵な西成のホテルだった。エレベーターの張り紙によると、週単位、月単位でも借りられるようだ。が、1月以降は料金値上げの模様(旧館ツイン2名まで2,880円など)。とはいえ、まだまだ低価格でコスパの良いホテルに変わりは無い。

■プロフィール

はんつ遠藤

1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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