「Everything OK」英語で声かけた新庄監督の“コミュ力” 助っ人痛快発進の舞台裏

日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】

劇的ドロー…万波同点弾の呼び水となった新助っ人・ヌニエスの一打

■日本ハム 5ー5 ロッテ(オープン戦・8日・鎌ケ谷)

新庄剛志監督率いる日本ハムは8日、千葉県の鎌ケ谷スタジアムで行われたロッテとのオープン戦を5-5で引き分けた。劣勢の8回、万波中正外野手の3ランなどで4点を奪い、同点とする劇的な展開。このイニングの口火を切ったのは、今季新加入のレナート・ヌニエス内野手の“あいさつ代わり”の一打だった。ビッグボスのコミュニケーション能力と、助っ人の対応力が生んだ一打。その舞台裏で何があったのか。

ヌニエスは3日に来日したばかり。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための政府方針により、新外国人選手は来日できない状況が続いていたが、3月から緩和されている。定められた隔離期間を終えたヌニエスは8日から1軍合流、そしていきなりメジャーリーグ通算56本塁打の片鱗を見せた。

4点を追う8回、「4番・指名打者」で先発した宮田輝星外野手の代打として起用されると、ロッテ3番手・成田翔投手の6球目、低めのチェンジアップをうまく拾って左翼線へと運んだ。調整不足などどこ吹く風、二塁へ猛然と滑り込むとベンチへ向かって右手を突き上げ、チームを鼓舞した。1死後、清水優心捕手の適時二塁打で生還し、ビッグイニングの端緒を切った形になった。

新庄剛志監督は「アメリカの(ストライク)ゾーンと、日本のゾーンは違うからね。今日は見逃し三振でいいから、ボールを見なさいと言っていたんだけど……」と期待の助っ人を、日本初打席へと送り出した場面を振り返る。さらに「でも、打ちたそうな顔をしていたの。だから『Everything OK』(好きにやれ)って伝えたら、ほんとに打ちに行ったんだよね」と愉快そうに笑った。

来日初打席で二塁打を放った日本ハムのレナート・ヌニエス【写真:羽鳥慶太】

メジャーリーグでプレーした指揮官ならではの助っ人“操縦術”?

指揮官ならではの助っ人操縦術と言えるかもしれない。新庄監督は2004年に日本ハム入りする前、3年間を米国球界で過ごした。阪神からFAして2001年にメッツ入り。2002年にはジャイアンツへ移籍し、日本人で初めてワールドシリーズに出場、安打も記録した。日米球界の“違い”を、身をもって知る存在だ。

ヌニエスに対しては意思を見抜くと、英語で声をかけた。ヌニエスはベネズエラ出身で、母語はスペイン語。ただ米球界で13年間プレーし、英語を駆使して生き抜いてきた。通訳を介してではなく、生身のコミュニケーションをとってきた指揮官にはより“近さ”を感じたのではないだろうか。

ビッグボスも、キャンプを行っておらず、隔離期間が明けて間もないヌニエスが見せたハッスルプレーには肝を冷やした一面もあったようだ。「まだ走らんでいいよって」と心配してみせるものの「その後もしっかりフォアボールを取っていたね」。ヌニエスは9回、無死二塁というサヨナラ機に今度はしっかり四球を選んでみせた。打ち気にはやらず、冷静に自分の役割を判断しての仕事ぶりには否が応でも期待が集まる。

日本ハムの上位進出には、助っ人の活躍が欠かせない。このオフは2019年にオリオールズで31本塁打したヌニエス、昨季もカージナルスとツインズで合計39試合に投げたジョン・ガント投手と、これまであまりなかった“ビッグネーム”と契約を結んでいる。8日には複数ポジションを守れるアリスメンディ・アルカンタラ内野手も来日。全員が顔をそろえた時こそ、本当の競争のスタートだ。間違いなく、チーム力はアップする。

「ここまでは思い通り行っているね。でももっと行ったろうと思っている。もっといいことあるだろうと思うし、レベルが上がれば上がるほど、上に行ったろうと思うんだよね」

これでオープン戦は4勝1敗2分。3月は負けなしだ。ビッグボスが口にした“成り上がり”発言も、現実味を帯びてくる。(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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