国境なき医師団(MSF)は2月28日、森ビル株式会社が運営する「アカデミーヒルズ」と共同で、
オンライントークイベント『命がけの「地中海ルート」最前線 国境なき医師団の捜索・救助の現場をジャーナリストと助産師が報告』
を開催しました。
命がけで欧州を目指す難民・移民を乗せた船の沈没が相次ぎ、昨年だけで2000人以上(国際移住機関調べ)が死亡・行方不明になった地中海。中でもリビア沖から地中海中央部の海域は、移民・難民が命を落とす最も危険なルートだと言われています。
そのリビア沖で救助活動を担うMSFの捜索・救助船「ジオ・バレンツ号」に、日本人ジャーナリストとして初めて、村山祐介さんが乗船。冬の地中海ルートの最前線を取材しました。MSFの助産師 小島毬奈は、2016年から地中海の捜索救助船での活動を続けています。
村山さんからは、人びとが移民・難民となった背景や移動経路、救助された人びとのストーリーについて、
も紹介しながら、わかりやすく説明いただきました。小島からは、船上での助産師としての仕事(妊婦検診、新生児検診、性暴力被害者の診察、下船時の新型コロナ感染症のテストなど)の他にも、救助された人びとの食事の手配や喧嘩の仲裁、そして毎日数百人が使用するトイレの掃除など、多岐に渡る船上での業務や救助活動での思いを伝えました。
小島は、「夜消灯後に巡視を続け、明け方に静かな船上でふと、『生まれた国が違ったら、自分もあのボートにいたひとりだったかもしれない』と思うことがある。日本は地中海の出来事を身近に感じるのは難しいかもしれないし、「難民・移民」というグループとして括られがちだが、一人一人がいろいろな思いで海を渡って来ている。そうした一人一人の尊厳を大切にしたい」と思いを語りました。
また、「日本は世界の情報が入ってくるのが遅かったり、十分に入ってこないこともある。自分から信頼の高いリソースにアクセスし、情報貧乏にならないようにする必要があるのではないか」と呼びかけました。
村山さんは、「どちらかというと内向きになり、関心自体が海外に向かない中で、地中海の難民救助活動に関心をもっていただけたことがとてもありがたい。遠い世界の話ではなく、日本を含めた世界全体がどう動いていくのかを感じていただきたい」と話しました。
当日のライブ視聴では213人の方々が参加し、「映像やトークを通じて、地中海難民の厳しい現実や、MSFのリアルな活動の様子を知ることができ、身近に感じることができた。」「自分にできることは何か考えていきたい」といった感想をいただきました。