ポニーリーグがベトナムでの野球普及を支援 “リメイク”グラブに込めた2つの思い

日本ポニーベースボール協会・松原仁会長、ヴー・ホン・ナム駐日ベトナム大使、広澤克実理事長(左から)【写真:川村虎大】

ポニーリーグはベトナムへグラブ300個&硬式球30ダースを贈呈する

日本ポニーベースボール協会は11日、東京・渋谷区の駐日ベトナム大使館で「ベトナム社会主義共和国への野球用品贈呈式」を行い、グラブ300個と硬式球30ダースを寄贈することを発表した。スポーツメーカーの協力のもと、協会所属選手が、使用していたグラブを自ら解体し、再度紐を通した“リメイク品”がプレゼントされる。なぜベトナムなのか――。そこには、世界的組織を持つポニーならではの選手育成への思いがあった。

【実際の写真】まるで新品のよう… 選手自ら作り直した“リメイク”グラブ

同日に行われた記者会見には、ヴー・ホン・ナム駐日ベトナム特命全権大使、日本ポニーベースボール協会の松原仁会長、広澤克実理事長らが参加した。広澤理事長は「SDGsが謳われる中で、自分たちにも何かできることはないか」との思いから贈呈が決まったことを明かした。

ベトナムの野球は発展途上だ。現在、ハノイ、ダナン、ホーチミンの3都市で10チームが活動している。正式な野球場はなく、学校などのグラウンドに防球ネットを張って試合などを行っているという。競技人口も少ないため、5人で試合を組んでいるのが現状だ。

ただ、野球が発展途上の国は他にもある。その中で、なぜベトナムを選んだのか。現地の人々に“野球熱”があるからだ。

ベトナムの野球人口は主に12~16歳、昨年ソフトボール協会が設立された

ベトナムの野球はインターナショナルスクールから始まっている。日本人や米国人が現地で野球を行うことで広まっていった。2021年にはソフトボール協会が設立されるなど、競技に対する理解が深まっている。しかし、課題がひとつあった。用具がないことだ。ナム大使は「野球は(ベトナムでは)新しいスポーツで、(用具の)市場ができていない。グラブを買うことができず、チームメートでシェアして使っている」と現状を明かす。現地の選手は12歳から16歳がほとんどを占めていることもあり、広澤理事長は「子どもたちは宝。野球に国境はない」と用具贈呈を決めた。

この取り組みは、日本の協会所属選手がSDGsを学ぶ機会にもなっている。贈呈されるグラブは、市原ポニー(千葉・市原市)と江東ライオンズ(東京・江東区)の選手たちが自ら使用したグラブを大会後や練習時間を削って一度解体し、ほつれている部分を修理し、リメイクしたもの。約1か月かけて300個をそろえた。新品のような輝きを取り戻し、広澤理事長も「こんなにきれいになるのか」と驚き、用具の大切さに気付かされたという。

グラブの提供は、きっかけに過ぎない。広澤理事長も「まだまだ時間はかかる」と見ている。今後は、野球用品の寄贈だけでなく、2023年に日本で開催予定の「ポニーアジアパシフィックトーナメント」へのベトナム選手の招待、コーチクリニック、審判クリニックを実施し、現地で野球指導にもあたっていくことも同時に発表され、野球を通じた国際交流を図る。

将来の夢は、ベトナムでの国際大会の開催。ナム大使も「夢はベトナムに野球場ができること」と普及を願う。ポニー独自の取り組みで国境を越えた野球発展、選手の育成に取り組んでいく。

【実際の写真】まるで新品のよう… 選手自ら作り直した“リメイク”グラブ

まるで新品のよう… 選手自ら作り直した“リメイク”グラブ【写真:川村虎大】 signature

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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