奈良クラブの「スペイン革命」。フリアン監督のゲームモデルと”パッション”

3月13日に2022シーズンの開幕を迎えるJFL。Jリーグ昇格を狙うプロクラブから、地域で戦う企業チームまで、様々な思惑を持つ者が戦うコンペティションだ。

今回Qolyでは関西地域でJFLを戦う4つのクラブ、FC大阪、FCティアモ枚方、MIOびわこ滋賀、そして奈良クラブの監督にインタビューし、今シーズンの展望を伺うことにした。

第4弾で取り上げるのは、J3ライセンスを保有している百年構想クラブの一つ「奈良クラブ」。昨年からチームを率いているスペイン人監督、フリアン・マリア・バサロ氏にZoomを通じてインタビューし、今季の構想について伺ってみた。(取材日:3月9日)

【動画】奈良クラブを率いるフリアン監督。グアルディオラにそっくりである

――昨季の成績は10勝13分け9敗、39得点36失点、勝点43の10位でした。

この結果については多くの方が過去の成績から比べて良くなったということで、祝福を受けたりもしました。

ただ監督としては、奈良クラブというチームは海外の監督を招聘して戦っているので、10位にとどまっていてはいけないという感覚を持っています。

クラブの周りには「過去よりも良くなった」とポジティブに見てくれる方もいますが、監督としての自分にとっては、この順位はまだ満足できない、納得がいかないものですね。

その後、昨シーズンの更新の時期にはクラブがさらにステップアップするため、そしてさらにプロフェッショナルになるために、監督の立場からお話をしました。

獲得する選手についてであったり、選手についての厳しい要求であったり、トレーニングがより良いものになるように、いろいろな要求をさせてもらいました。

――昨季最も印象的な試合は?

昨シーズンの1試合を上げるのは難しいんですけれども、そのなかでいくつかの場面においていいプレーがありました。

例えば「この試合はいいゲームだった」というのはないのですが、シーズンを通して徐々に良くなっていったという印象です。

その中でどの時期が印象に残っているかと言えば、シーズンの終盤ですね。チームプレーのアイデンティティ、クラブのアイデンティティを持ってプレーすることができていました。

――J3に昇格したいわきFCとの2試合(ともに2-2で引き分け)をあげるかなと思っていました。

いわきとのアウェイゲームでも試合を支配できる時間がとても長くありました。それはやはりビルドアップから攻撃の組み立てのところです。

攻撃の崩しにおいて、相手の陣地に入ってからの局面でも、いわきFCさんに対してすごくゲームを支配できていた印象があります。

逆にホームでのいわき戦においては、ちょっとディフェンス面で苦しむ時間帯があったかなと思っていますね。

守備の切り替えからのカウンターという攻撃のシーンもあったんですけれども、アウェイでの試合のようなビルドアップやゲーム支配というのはなかった。

逆に、守る中での切り替えやカウンターは上手くできたところがありました。その中でも苦しみましたけどね。

――昨季もっとも上手く行ったところ、逆にうまく行かなかったところは?

良くなったところは、一つの具体的なことではないんですが、チームが1試合1試合、日に日に改善していったということですかね。

そこはとても良くできていたと思います。それがどこから来るかと言えば、日頃のトレーニングの流れであったり、練習がうまく行っているということ。

それでチームが1試合1試合非常に良くなって、成長していった。それが良かったというのが昨シーズンであったと思います。

具体的なところでいえば、試合を見に来てくれたファンの方々から見れば、奈良クラブのアイデンティティであったりアイデア、ポジショニングなど、我々のやりたいプレーというのがおそらくはっきりと理解できる、はっきりと見ることができたのではないかと。それがとても良くできたところかと思います。

うまくいかなかったところについては、監督が完璧主義者なものですからたくさんあげることができてしまいますが(笑)。

やはり、細かい部分ですね。一つ一つのプレーにおける細かいところも、ディテールのところが足りていなかった。

具体的に言えば、攻撃においても守備においても「アグレッシブさ」でしょうか。やはりまだまだ全然足りていなかったと思っています。

ただ、アグレッシブさというのは暴力やバイオレンスとは違います。

守備の局面で言えば、相手の選手にクロスを入れさせないとか、シュートをさせないとか、相手に時間を与えないプレー。そういったイメージでアグレッシブさという言葉を使っています。

攻撃でのアグレッシブさというのは…ボールを持つことは最終的にゴールを奪うためですよね。

ですからゴールに向かっていくことに対するアグレッシブさです。ボールを保持したときに、みんなでポジティブに、できる限り前の方に持っていく。ゴールの方向に進んでいく。それがアグレッシブなプレーだと考えています。

――補強ではひとつ外国人枠を使ってスペイン人GKのアルナウ選手を獲得しましたね。彼に期待しているものとはなんですか?

おそらくこれから多くのクラブが外国人選手を入れてくると思いますし、奈良クラブもこれから数年どんどん成長していくと思います。

外国人選手を取ってくる、外国人選手がチームにいるということに、クラブとしても慣れなければなりません。

獲得の狙いとしては、「外国人のゴールキーパーと取ってくる」というよりは、全てのポジションにおいて競争力を持つということです。競い合わせることが狙いでした。

どのポジションにおいてもレギュラーを確約された選手はいませんし、互いに競争をして競い合わせることが狙いです。

例えばゴールキーパーは3人いますが、その3人の中で競い合わせることです。日本人であろうが外国人であろうがです。

全てのポジションにおいて競争力があるという点では今回FWに浅川隼人選手(ロアッソ熊本から)を獲得しましたし、それによって誰が出場するかという点で競い合わなければなりません。

ウイングの選手については嫁阪翔太選手(いわてグルージャ盛岡から)を獲得しましたし、チーム内での競争力はとても上がってきました。

キーパーについて思っていること、特にアルナウ選手に対して思っていることは、「我慢強く」という点です。

昨シーズンから所属しているGKの金子選手、赤塚選手もいますけれども、彼らも奈良クラブのレギュラーとして出られることを証明してくれています。

アルナウ選手はまだこれから来日して(※9日に来日、10日に練習に合流しました)、彼自身もレギュラーとして出られることを証明しなければいけないので、まずは我慢強く焦らずにいて欲しいなと思っています。

――13日の開幕戦の相手、MIOびわこ滋賀の印象は?

昨シーズンもMIOびわこ滋賀さんとはホーム&アウェイの2試合をやりましたけれども、自分たちのいいプレーができなかったという印象があります。

そういう相手と対戦するということで、今シーズンも十分なリスペクトと警戒をして、臨んでいきたいなと思っています。

――今シーズンの奈良クラブを左右するキーポイントは?

チームには絶対にマスターして欲しい3つのポイントがあります。

一つ目はパス。自分たちのチームは、ボールを持つことで攻撃するというスタイルがあります。その中で大事なパスを完璧にプレーできていなければならない。そのように選手たちには伝えています。

守備のときにおいては、できるだけ早くボールを奪えるように、ボールを早く自分たちのものにできるようにするということ。

そして団結力です。繋がりやコンパクトさという形になりますけれども、自分たちは常にどんなときでも適切な距離感を取ってプレーすること。

どの局面においても、攻撃においても守備においても、適切な距離感を持ってプレーすること、コンパクトさを保つということです。

――最後にサポーターにメッセージを頂けますか。

まずファンの皆さんに伝えたいのは、監督としてチームの選手たちには「常にプレーでパッション(情熱)を伝える」ように厳しく要求していこうと思っています。

なので、もしファンのみなさんが試合を見ていてそのパッションが感じられない場面があれば、仰っていただけたらと思います。

我々はそれを伝えることに重きをおいてやっているので、それが感じられない場面があれば言ってください。

特にゴールを決めた場面はポジティブなエネルギーが発せられる時です。そこでパッションが感じられなければ、そう言うときこそ仰ってくださいね。

――取材が立て込んでいたと伺いました。今は13時半なのですが、昼食もまだなのですか?

長い午前中になってしまいましたが、奈良クラブに対する取材やインタビューは常に出させていただきます。興味を持ってくださる、広めていただけるということで、皆さんに感謝しております。

――ちなみに、お昼はなにを?

こんな時間になってしまいましたが、何を食べるのか決めていなくて。今から決めようかと思っています。

(事務所の)目の前に「まるかつ」というトンカツ屋さんがあるので、時間があればそこにいこうかと思っています。

――わかりました、ありがとうございました!奈良クラブのフリアン監督でした。

J3昇格を狙う奈良クラブの開幕戦は13日14時キックオフ、アウェイでのMIOびわこ滋賀戦。そしてホーム開幕は19日のHonda FC戦となる。

チケットはすでに発売されている。詳しくはJFLや奈良クラブの公式ホームページでチェックして欲しい。

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