PayPayドームの中心で愛を叫ぶ ソフトバンクが協力した“プロポーズ大作戦”

PayPayドームでプロポーズを決行した早田祐太郎さん(右)と知識千秋さん【写真:福谷佑介】

早田祐太郎さんと知識千秋さんのカップルがドームの中心で結婚の約束を交わす

前日まで選手たちがオープン戦でハツラツとした戦いを見せていたPayPayドームのグラウンドで、1組のカップルが将来を誓い合った。早田祐太郎さんと知識千秋さん。3月7日の午後、ソフトバンクの本拠地で球団も協力し、知識さんへのサプライズでの“プロポーズ大作戦”が敢行された。

事の発端は2月に球団の代表番号にかかってきた1本の電話だった。

「PayPayドームでプロポーズできませんか?」

依頼してきたのは、同じ会社で働く早田さんと知識さんの同僚。早田さんが知識さんへサプライズでプロポーズしたいという。「自分が野球をやっていたのもあって、何か野球に関してプロポーズがしたいと思っていました。入社した時に社長から『どんなプロポーズしたい?』と聞かれた時にも『マウンドから投げて彼女に捕ってもらいたい』と言っていて、ずっと夢でした」。2007年に甲子園でベスト4に入った長崎日大でマネジャーだった早田さんたっての夢を叶えるための提案だった。

球団では隣接するホテルと協力し、グラウンド上での婚礼の前撮り撮影のサービスは行っているものの、プロポーズの場を用意したことはなかった。突然の依頼だったが、「何か協力できることがあるのではないか」と担当部署が検討し、ドームを貸切にした上で“プロポーズ大作戦”に協力することに決めた。2人が勤める会社、スタッフも全面バックアップ。ドームを貸し切る費用を社長が負担し、会社、同僚を巻き込んだ“プロポーズ大作戦”が動き出した。

早田さんは「バレないようにコソコソ」と球団と打ち合わせを重ねた。小郡市に住む知識さんにどうやってドームまで来てもらうか、どういった段取りでプロポーズまで進めていくか。球団と一緒になって、約1か月間かけて練り上げたプランはこうだ。彼女は会社の同僚に誘われる形で、ドーム内の施設を見学できるドームツアーに参加。各所を巡り、最後にフィールドへ。そこに早田さんがおり、始球式形式でプロポーズを決行するというものだった。

膝まずきプロポーズする早田祐太郎さん(右)と知識千秋さん【写真:福谷佑介】

突然の依頼に協力したソフトバンク球団「お客様の最高の思い出になるように」

こうして迎えたプロポーズ当日。緊張の面持ちでPayPayドームのグラウンドに姿を見せた早田さん。同僚約60人もサプライズのために集まり、両サイドのベンチに身を潜めてスタンバイした。ドームの天井などをツアーで巡ってきた知識さんがフィールドにやってくると、球場内は暗転。照明が点くと、誰もいないはずのマウンド上に早田さんの姿があった。困惑を隠せないまま、知識さんはスタッフに促されてホームベース付近へと歩を進めた。

「今からボール投げるんで捕って読んでください」。想いを認め、投じたボールを知識さんがキャッチ。歩み寄った早田さんは改めて「千秋のことが大好きです。僕と結婚してください」。膝まずき、婚約指輪を差し出した。知識さんは目に涙を浮かべ「お願いします」。同僚たちがベンチから飛び出し、祝福した。成功後には2人のヒーローインタビューの場も用意され、同僚たちの前で喜びをコメント。その様子はセンター後方の「ホークスビジョン」に映し出されていた。

突然のプロポーズに、知識さんは最後まで驚きを隠せぬ様子で「本当にビックリとしか出てこないです。あっち(三塁側ベンチ)にたくさん人がいたので、何か間違えたのかと思って戻ろうとしちゃって。入ったらなんか(早田さんが)いるし……。すごく嬉しかったですし、思い出になりました」。同僚たちまで巻き込んだサプライズに感極まった。

この日のプロポーズの筋書きは球団と早田さんが一緒になって考えたもの。そして、ビジョンへの投影やヒーローインタビュー、場内アナウンスによる演出などは球団が用意したものだった。「球団としてエンターテインメントに重きを置いており、エンターテインメントとしてお客様の最高の思い出になるようにと考えました」。どうすれば2人が喜び、最高の思い出になるか。球団スタッフも業務外で思案し“プロポーズ大作戦”にスパイスを加えた。

「ホークスさんには、快く受け入れてくださって、今日まで打ち合わせをさせていただき、スタッフさん含めて色々なことを仕込んでくださいました。オープン戦も始まって大変な中でご協力いただいて感謝しかありません」。プロポーズを成功させた早田さんも感激の面持ちを浮かべた。ファンは見ていない野球から離れたところ。1組のカップルを喜ばせていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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