ありがとうVSE!~Special Thanks & Forever~

新松田-開成 2022.1.16 P:吉原勇樹

昨年(2021年)12月17日に配信された小田急電鉄「NEWS RELEASE」に大きな衝撃を受けたのは、おそらく私だけではないと思います。

そこに記されていたのは、

「2022年3月11日(金)、特急ロマンスカー・VSEの定期運行を終了」。

え?どういうこと?まだ新しいのに、、、

「特急ロマンスカー・VSEは、箱根観光専用特急として2005年3月に就役し、シルキーホワイトの洗練された外観や、“Vault”に形容される広々した室内と、展望席や大型窓からのダイナミックな風景などに多くのご支持をいただいてまいりました。約17年にわたり2編成で延べ600万キロ超を走行し、この間に約2,000万人のお客さまにご乗車いただいてまいりましたが、車両の経年劣化や主要機器の更新が困難になる見込みであることから、3月12日のダイヤ変更にあわせ定期運行を終了、その後は臨時ダイヤによるイベント列車などでの運行を継続した後、2023年秋頃に引退する予定です。」(「NEWS RELEASE」より)

製造後17年。鉄道車両の耐用年数を考えれば、まだまだ活躍できる車両。1996年にデビューしたロマンスカーEXEが更新整備を受けながらまだまだ使われそうなことと比べても、早すぎる戦列離脱。ショックなニュースです。

コロナ感染拡大がもたらした輸送需要の大幅な減少基調の影響を受けたのか、特急列車の大幅な削減が盛り込まれた2022年3月のダイヤ改正。車両の整理にあたって、連接台車を持つ特殊な構造のVSEはその対象となってしまったのかもしれません。

新宿 2021.2.11 P:吉原勇樹## 小田急とのご縁

神奈川県横浜市で生まれ育ち、職場も横浜市内だったことから、身近な鉄道といえば家の裏を走る横浜線や近くの東海道本線・京浜東北線が中心でした。それがある年に相模原市に転居してから変化します。まず大きく変わったのが都内への移動ルート。写真展巡りなどで都心部を訪ねる機会は多いのですが、従来東海道線や東急東横線経由だったものが、町田駅乗り換えでの小田急線経由一本に。これが現在に至る小田急線とのご縁の始まりになります。

私が利用するのは、その多くが町田-新宿間。相模原市民になった当時は、小田急線は喜多見-和泉多摩川間のみが複々線化されて、急行に乗っても前の列車に追いついてしまいノロノロ運転が日常的でした。東京都の「連続立体交差事業」と一体的に推進された小田急の複々線化工事は西側から区分されたエリアごとに順次施工されて、変わりゆく沿線の姿を車窓に見ながらの移動が楽しかった思い出があります。

世田谷代田-梅ヶ沢 2013.3.9 P:吉原勇樹## VSEとの出会い、乗って楽しむ

身近な鉄道となった小田急線。となれば、自然に興味の対象となります。列車種別も車両のバラエティも豊富な路線ゆえ、もっぱら利用する町田-新宿間をさまざまな車両を乗り比べるのも楽しいものがありました。特急車両も多種多様、先輩ロマンスカーに混ざってVSEも日々活躍中という時代。小田急ロマンスカーといえば、やはり展望席のある車両に魅力を感じ、特急利用時はやがてLSEとVSEを中心に交互に乗車する感じに。それも可能な限り展望席シートを確保して、その眺めを楽しみながらの移動スタイルが定着していきます。

狛江 2017.11.26 P:吉原勇樹

パノラミックな眺めが楽しめるLSEと比較して、ミニシアターのような落ち着きのある空間設計のVSEの展望席。VSEは、車窓がワイドに広がる迫力を感じることのできる2列目の窓側席もお気に入りだったりします。

成城学園前 2018.12.1 P:吉原勇樹

長らく続いた小田急線の複々線化工事も2017年度中にようやく完成、東北沢-世田谷代田間は高架ではなく地下化されました。トンネル内は場所により施工方法が大きく異なっており、流れる景色にその違いを確認ながら乗車するというちょっとマニアックな楽しみ方も加わることに。

下北沢-東北沢 2019.5.18 P:吉原勇樹## 撮影対象としてのVSE

ある年の職場内人事異動に伴い、就業地が神奈川県平塚市内(といっても秦野市との隣接エリア)となったことから、相模原市内の自宅からマイカー通勤を始めたことがきっかけで始めたのが、小田急線の沿線撮影。毎日撮影機材をフルセットで車に積み込んでの通勤に。VSEをはじめとするロマンスカーは格好の被写体でした。

東海大学前-秦野 2017.10.26 P:吉原勇樹

一昨年から就業地は再び横浜市内となりましたが、その後も小田急線撮影活動は続けており現在に至ります。

メトロポリタンを起点に、郊外都市・ベッドタウン、農作エリア、そして日本を代表する観光地を結ぶ小田急線。その多彩な沿線情景も魅力で、四季折々の姿を楽しむことができます。これまでの撮影成果のなかから数点セレクトしてみました。

登戸-和泉多摩川 2021.5.3 P:吉原勇樹

町田 2022.2.27 P:吉原勇樹

東海大学前-秦野 2017.6.29 P:吉原勇樹

東海大学前-秦野 2019.6.18 P:吉原勇樹

秦野-東海大学前 2020.4.17 P:吉原勇樹

渋沢-新松田 2022.1.4 P:吉原勇樹

新松田-開成 2021.12.30 P:吉原勇樹

箱根板橋-風祭 2015.11.7 P:吉原勇樹

近年は販売が低迷し、新型コロナウイルスの感染拡大が決定打となったのか、ロマンスカー車内販売が廃止されたのが2021年3月。かつては座席に飲み物を運ぶサービスから「走る喫茶室」として親しまれたロマンスカー車内販売。乗車するときの楽しみの一つであっただけにとても残念でした。そして、1年後の今年はVSEの定期運行終了。社会情勢やライフスタイルの変化、と一言で片づけるのは、やはり寂しいものがあります。

ロマンスカーVSEは今後イベント列車などでの運行が報じられており、完全引退は2023年秋頃とのこと。ラストデーまではせめて車内販売も演出としてでも復活させて、フルサービスでの運行を望みたいものです。

入生田-風祭 2021.1.3 P:吉原勇樹

シルキーホワイトの洗練された美しい車体と洗練された快適な室内空間で多くのファンを魅了したロマンスカーVSE。私にとっては、眺めても、乗っても、撮っても楽しい名車として永遠の記憶に刷り込まれることと思います。

たくさんの想い出をありがとうVSE!

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