日本のユニクロ、米スタバやマクドナルド...「ロシア離れ」決断したこれだけ多くの多国籍企業(一覧)

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

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ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって2週間が経った。

その制裁措置として、ロシア事業からの相次ぐ撤退の動きは、欧米企業が率先して進めている。ユニクロも当初表明していたロシアでの事業方針を一転し、21日よりロシア国内にある全50店舗の営業と電子商取引(EC)サイトを休止するという。

これらの発表と共に、一部の店舗では駆け込み客による長い列ができているようだ。

9日付のニューヨークタイムズは、ロシアでの事業の停止や縮小などを発表したアメリカを含む多国籍企業の動向を、以下のように紹介している。

◎ 食品業界

  • 米系企業

スターバックス(Starbucks)

(クウェートのアルシャヤグループが所有、運営する)ロシア国内の全店舗の閉鎖を発表

マクドナルド(McDonald)

ロシア国内の約850店舗の一時閉鎖を発表

(photo:CNNによると、一時閉鎖を決めたロシアのマクドナルドは、失業する6万2000人の従業員に対してしばらくの間、給料を払い続けるという。)

レストラン・ブランズ・インターナショナル(Restaurant Brands International)

バーガーキングやポパイズなど、人気ファストフードチェーンを展開する米国とカナダの合弁企業。ロシアの現地フランチャイズ加盟店が運営する約800の店舗に対する企業サポートと今後の投資の停止を発表

Mars(マーズ)

チョコレート商品「M&M’s」や「スニッカーズ」などを製造・販売する同社は、ロシアでの新規投資の停止を発表

ペプシコ(PepsiCo)

「ペプシ」「ドリトス」「トロピカーナ」などを製造・販売する食品、スナック、飲料企業。ロシア国内での飲料食品の販売停止を発表したが、「人道的な取り組み」とし、乳製品や離乳食製品の生産を継続するという

ヤム・ブランズ(Yum! Brands)

大手ファストフード企業。ロシア国内に所有する約70店舗の「KFC」と約50店舗のフランチャイズ経営の「ピザハット」の閉鎖を発表

  • そのほか

ハイネケン(Heineken)

オランダ発のビール会社。ロシアでのビールの製造、販売、宣伝活動の停止を発表

カールスバーグ(Carlsberg)

デンマーク発のビール会社。ロシア事業への投資と販売の停止を発表。グループ会社であるロシアの「バルティカブルワリー」社は別事業として運営を継続する

◎ 小売業界

  • 米系企業

ナイキ(NIKE)

ロシア国内116店舗での販売停止を発表。しかし発表から1週間経つもまだ店舗は稼働中で、完全閉鎖まで1ヵ月は要する模様。アウトレット商品を扱う「ファクトリーストア」はすでに一時閉鎖中との情報

ティージェイエックス(TJX)

大手小売チェーン「T.J.マックス」や「マーシャルズ」の運営で知られる同社は、ロシア国内に400以上の店舗を展開する小売チェーン「ファミリア」の株式所有権の売却を発表

フィリップモリス(Philip Morris)

創業は英国だが、本社を米国、統括本部をスイスに置くたばこ企業。投資計画を一時停止し、ロシアでの製造の削減を発表

  • そのほか

ユニクロ(Uniqlo)

(前述)

イケア(IKEA)

スウェーデン発の家具メーカー。ロシアとの輸出入の停止を発表するも、「ロシア国内の顧客が必需品にアクセスできるように」とし、主要ショッピングセンターチェーン「MEGA」での店舗運営は継続予定という

エイチ・アンド・エム(H&M)

スウェーデン発のアパレルメーカー。ロシア国内170店舗での販売停止を発表

カナダグース(Canada Goose)

カナダ発のアパレル企業。ロシアへの卸売とECサイトでの販売停止を発表

アディダス(Adidas)

ドイツ発のシューズ、スポーツ系アパレルメーカー。ロシア国内と周辺国に約500店舗を展開するが、ロシアでの販売停止を発表

ユニリーバ(Unilever)

「ダヴ」「サンシルク」「ラックス」「リプトン」など400以上の食品や家庭用品(洗剤・ヘアケア・トイレ用品など)のブランドを190ヵ国で展開する英国発の企業。ロシアとの輸出入の停止を発表

ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(British American Tobacco)

「ケント」「クール」「ラッキー・ストライク」などを展開する英国発のたばこ企業。ロシア事業からの撤退を発表

◎ メディア業界

  • 米系企業

ネットフリックス(Netflix)

ロシア国内でのサービスの提供と、今後のプロジェクトの停止を発表

ワーナーブラザーズ(Warner Bros.)

ウォルトディズニー(Walt Disney Company)

共にロシアでの映画公開の一時停止を発表。さらにウォルトディズニーはロシア国内のすべての事業運営の一時停止を発表

◎ IT・テック業界

  • 米系企業

グーグル(Google)

ロシア国内での検索やユーチューブ(YouTube)を含む、同社提供のサービスを停止。ユーチューブは「RTやスプートニクを含むロシア国営メディアに関連する全チャンネルを世界的にブロックする」「ロシアのウクライナ侵攻に関するものでガイドラインに違反した映像を削除する」と発表

マイクロソフト(Microsoft)

アップル(Apple)

共に、ロシアでの販売の一時停止を発表

アマゾン・ウェブサービス(Amazon Web Services)

ロシアでAWSクラウドのサービスを受けられる新規会員の受け入れ停止を発表

IBM

ロシアでの事業停止を発表

ウーバー(Uber)

配車サービスを運営するロシアのインターネット会社「Yandex」からの売却を早期実現化できるよう計画

  • そのほか

ソニー(Sony)

日本発のソニーは、ロシアへの「すべてのソフトウェアとハードウェアの出荷を停止」「ロシア国内でのPlayStation Storeの運営の停止」を発表

◎ 旅行、運送業界

  • 米系企業

ハイアット(Hyatt)

ヒルトン(Hilton)

一大ホテルチェーンの2社は共に、ロシア国内での開発事業の中断を、ヒルトンはロシアのモスクワ本社を閉鎖すると発表

アメリカン航空(American Airlines)

デルタ航空(Delta Air Lines)

ユナイテッド航空(United Airlines)

主要航空会社は共に、ロシア上空の飛行中止と、ロシアの航空会社とのチケット販売におけるパートナーシップの削減を発表

ボーイング(Boeing)

ロシアの航空会社への部品、メンテナンス、技術サポートの供給の停止や、ロシアからのチタン購入の停止を発表

UPS

フェデックス(FedEx)

一大運送・物流サービス企業は共に、ロシアとベラルーシへの出荷と運航の停止を発表

  • そのほか

DHL

ドイツ発の一大運送・物流サービスは、ロシアとベラルーシへの出荷と運航の停止を発表

エアバス(Airbus)

ロシアの航空会社への部品、メンテナンス、技術サポートサービスの供給の停止を発表

◎ 金融業界

  • 米系企業

アメリカン・エキスプレス(American Express)

マスターカード(Mastercard)

ビザカード(Visa Card)

ロシアの銀行が発行したこれらのクレジットカードは、ロシア以外の国では利用できなくなり、またほかの国で発行されたこれらのクレジットカードはロシア国内では利用できなくなると発表

ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)

JPモルガンチェース(JPMorgan Chase)

ロシアでの事業の縮小を発表

シティグループ(Citigroup)

ロシア国内に約3000人の従業員を抱える同社は、「同国内での事業の評価、分析をしていく」と発表するに止まった。同社は昨年、海外市場からの撤退の加速化を発表し、その一環としてロシア国内の消費者部門事業を縮小し、また事業が売却されている

ウェスタンユニオン(Western Union)

ロシアとベラルーシでの事業停止を発表

  • そのほか

デロイト(Deloitte)

アーンスト・アンド・ヤング (Ernst & Young)

ケーピーエムジー(KPMG)

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)

この4大会計事務所はロシアからの撤退を発表

◎ エネルギー業界

  • 米系企業

シェル(Shell)

ロシアの天然ガス大手「ガスプロム」との合弁事業から撤退を発表

Exxon Mobil (エクソンモービル)

ロシアとの大規模な石油および天然ガス事業の終了を発表

  • そのほか

BP

英国発のエネルギー関連企業。ロシアの国営石油会社「ロスネフチ」の約20%の株式の売却を発表

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このような企業の決定は、今後ジワジワとロシア国内の人々と市民生活に影響を及ぼしていくだろう(もちろんロシア国外の我々にも)。

あるロシア人記者は、米CNNを通じてこのように述べた。

「人々が砂糖や穀物を買いに走ったが、これはほんの始まりに過ぎない。我が国がこれまで欧米の技術や輸入に頼っていた自動車、オムツ、離乳食、おもちゃ、医薬品など基本的な必需品が不足していることに、人々はそのうち気づくだろう」

また、ロシアで今週閉店したマクドナルドについて、このように綴っている。

「1990年、当時まだソ連だった時代のモスクワに第一号店をオープンしたマクドナルドは、ロシアの人々にとって(華やかな)『西側の世界』のシンボルとして長い間あり続けた。そんなマクドナルドの閉鎖は、独裁国家における『西側の終焉』、つまり我々にとって消費の時代の終わりと、その先にある暗闇を示している」

(写真キャプ:1990年1月31日、モスクワにオープンしたマクドナルドのロシア一号店には、煌びやかな「西」の食べ物を求めて長蛇の列ができた)

筆者は以前社会主義国のキューバを訪れた時、日本および欧米諸国で当たり前にあるこれらのものが「ない」ことに驚いたのだが、あったものが突然なくなるのは最初からないより辛く不便なことかもしれない。いつも困窮するのは、政府に振り回される一般市民なのだ。

CNNの記事では、キューバで起こったような「ブレイン・ドレイン」(頭脳の流出=知識人が国外に脱出することによる社会主義の弱体化)がロシアでも始まることを示唆した。

すっかり四面楚歌となったロシアだが、プーチン大統領は10日、外国企業がロシア事業の停止や撤退を決めた場合の対抗措置として、企業の資産を差し押さえたり、ロシア側が経営権を取得したりする可能性があると警告し、強気の態度を見せている。

Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

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