柄本佑、鈴木杏、阿部サダヲ共演で平野啓一郎の「空白を満たしなさい」がドラマ化

NHK総合で6月25日スタートの連続ドラマ「空白を満たしなさい」(土曜午後10:00)に、柄本佑、鈴木杏、阿部サダヲが出演することが発表された。

本作は、芥川賞作家・平野啓一郎氏が東日本大震災直後に発表した同名小説を原作にしたヒューマンサスペンス。「もしも亡くしたはずの大切な人にもう一度会えたら」という着想から執筆され、今またパンデミックを経て一層心に響く作品だ。3人のほか、萩原聖人、渡辺いっけい、うじきつよし、藤森慎吾、ブレーク・クロフォード、風吹ジュンらも出演する。

ある夜、土屋徹生(柄本)がふと目覚めると、そこは会社の会議室だった。いつものように家に帰ると、妻の千佳(鈴木)が言葉を失いおびえているようで、様子がおかしい。そこへ1歳だったはずの息子が起きてくるが、どう見ても4歳にはなっている。やがて1人の役人が訪ねて来て、「あなたは亡くなったんです、3年前に」と言う。テレビやネットには、死んだはずの人間が世界中でよみがえっているというニュースがあふれていた。だが、徹生には死の記憶がない。会社の屋上から転落したというが、事故・自殺、どちらも身に覚えがなく釈然としなかった。

もしや生前、何かにつけてつきまとって来たあの男・佐伯(阿部)に殺されたのではないだろうか? 徹生の会社の警備員をしていた佐伯は、格差と孤独への恨みを徹生にぶつけ、嫌がらせを繰り返していた。深まる謎を前に、答えを追い求める徹生。だが、千佳は何かを隠しているようだ。徐々に解き明かされていくそれぞれの心の闇。徹生たちは、もう一度人生をやり直せるのか。そして、その果てに見いだす真実とは?

柄本は「行きつけの喫茶店のマスターに『はいどーぞ』と文庫を渡されたのが、この小説との出合いです。あれから3年。まさか自分が土屋徹生をやるとは思ってもいませんでした。不思議な縁に緊張しています。高田亮さんのシンプル・イズ・ベストかつ、どこか色気の漂う本にとても大人な世界を感じています。地に足をつけて、頑張ります」と抱負を述べる。

鈴木は「サスペンスから始まってやがて人間の本質的なところにたどりついていくこの作品は、いろんな色を持っていて、どこへ連れて行かれるか予想できない面白さがあります。生とは、死とは、夫婦とは……さまざまなテーマを、押しつけではなく受け取り方をゆだねるような優しさや温かさとともに、お届けできたらと思います」と意欲を燃やす。

阿部は「僕の演じる佐伯は風貌も変わっていて、出てきたとたんに周りを異様な雰囲気にすると思います。でも、意外に核心を突いたことを言っていて、回を追うごとに人間性も見えてくると、実は今の社会や人間のことをよく分かっている人なんじゃないかと感じられるキャラクターです。佐伯とは一体何者なのか…? 皆さんにもいろいろ想像しながら見ていただければと思います」とメッセージを寄せている。

原作の平野氏は「コロナに戦争と、人間の命について考えさせられるような出来事が立て続けに起きています。この作品は、死んだ人間が次々によみがえる、という突飛な物語です。もし自分が死んで生き返ったなら、愛する人が生き返ったなら、まず何をしたいでしょうか? 主人公も『復生者』の1人ですが、彼は自分の突然の死の真相を探る過程で、私とは何かと問い、愛する人たちとの関係を見つめ直し、仕事の意味について考えます。『幸福』とは何でしょうか? このありきたりな問いに向かい合うべき時でしょう」と作品に込めた思いを伝える。

脚本の高田亮氏は「この小説を読んだ時、2012年に書かれた物語が、コロナ禍が長引く今にこそ必要な内容であることに驚きました。作者の平野啓一郎さんは、いずれ世の中が行き詰まり、普通の生活すら困難になっていくことや、多くの人が生きていく上で救いが必要になることが分かっていたに違いありません。私自身、この物語を読むことで気持ちが楽になりました。ドラマになることで、多くの方の気持ちが楽になることを願っています」と呼び掛けている。

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