有権者は国政選挙の投票率低下についてどう思っているのか(データアナリスト 渡邉秀成)

今年は7月に第26回参議院選挙が予定されています。
各政党の候補者選定についての報道も少しずつですが流れてきています。

選挙が近づくと、国政選挙の投票率が低下傾向にあることが各メディアで報じられます。
衆議院、参議院、統一地方選挙投票率が低下傾向にあることは下記グラフからもわかります。

このような投票率低下傾向について有権者はどう思っているのか?
有権者は選挙で投票してもしなくてもいいと思っているのか、
投票しなければならないと思っているのか、
有権者はどのような意識でいるのでしょうか?
今回は有権者の投票義務感について観察します。

有権者が投票率の低下についてどう思っているのかについて、
公益財団法人 明るい選挙推進協会が調査をしています。
この意識調査結果をグラフ化したものが下記になります。

この調査結果を見ると、
投票率の低下傾向が続くのは問題であると考える人が多く、
何らかの対策を講ずるべきだと思うという意見が過半数を締めています。
その一方、投票するかしないかは個人の自由なので別にかまわないと思うという意見が1割程度あることがわかります。

好ましくわないが、やむを得ないと思う、
何らかの対策を講ずるべきと思うという意見をまとめると、
4分の3は好ましくないと思っています。

また、有権者の投票義務感についても調査をしています。
こちらの調査結果をグラフ化したものが下記になります。

こちらの調査結果を見ると、
投票するしないは個人の自由という意見が2003年には2割程度でしたが、
2019年には3割程度に上昇しています。

また、2003年には投票をすることは国民の義務であると考える人が5割ほどでしたが、
2019年には3割ほどに低下していますが、
これはアンケートの回答方法が面談から郵送回答に変更されたためと思われます。

ここまで見てきたように

*有権者は投票することは国民の義務であり棄権すべきではない、
*投票率の低下傾向について何らかの対策を講ずるべき

と回答する人の割合が多いことがわかります。

このような有権者が多いことを考えると、
選挙について最低投票率等の何らかの方策をとったほうが良いと思われます。

たとえば憲法改正の国民投票で考えてみます。
近年の国政選挙投票率が50%前後で推移しています。
投票する有権者が全体の半分です。
憲法改正の国民投票は投票した人の過半数で憲法改正を可とするか、不可とするかが決まります。
言い換えれば全有権者の4分の1程度の投票行動で可決、否決が決まります。
これまでの衆議院選挙投票率で投票率の過半数はどのあたりになるのかをグラフ化したものが下記になります。

改めてグラフ化してみると、
これで有権者の意思が反映されているのか?疑問に感じます。

このような投票率低下傾向について対策を打つために、
若年層には選挙出前活動、
期日前投票の充実等がなされていますが、
それでも投票率が低下傾向にあります。

投票率向上のためには、
そして選挙啓発活動のみならず、
学校教育において現代史教育の充実が必要なのかもしれません。

中学校、高校の歴史授業等では、
古代から現代の順で学ぶことが多く、
現代史部分は学年末になり駆け足でざっと流す授業になる傾向があるので、
選挙に関心が向かない可能性もあります。
歴史授業を現代から過去にさかのぼる形態もあれば*、
若年有権者が選挙に関心が向く可能性が高まるのかもしれません。
*[https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/062/siryo/attach/1367883.htm](https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/062/siryo/attach/1367883.htm)
文部科学省 教育課程部会 高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム(第3回) 配付資料 > 資料1 高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームにおけるこれまでの主な意見(未定稿)

ここまで見てきたように、
多くの有権者は投票を棄権しないほうが良いと思っており、
また投票率の低下傾向について何らかの対策を講ずるべきと考えています。
投票率向上のための何らかの対策を取る時期に来ているのかもしれません。

今回は投票率の低下について有権者はどう思っているのかについて見てきました。

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