中学で150キロも「大した数字じゃない」 阪神ドラ1・森木大智が求める理想の投手像

阪神のドラフト1位ルーキー・森木大智【写真:共同通信社】

高卒1年目も「体を作っていくのも大事ですが、もうプロ野球選手という立場」

150キロの直球をマークし“スーパー中学生”と騒がれた右腕は今、憧れ続けた甲子園を本拠地とする阪神で、プロでのスタートを切った。このほど、ドラフト1位ルーキー・森木大智投手がFull-Count編集部のインタビューに応じ、自身が追い求める投手像、プロ野球選手としての覚悟を語った。

投げる度に首脳陣の評価は上がっていく。春季キャンプは2軍(高知・安芸)スタートだったが、怪我もなく順調にメニューを消化すると、3月11日の教育リーグ・中日戦(鳴尾浜)では最速152キロの直球で1回1安打無失点。投じた直球はオール150キロ超えと、そのポテンシャルを見せつけた。

「ここまでは順調にいっていると思います。自分の中でもいい感じだなと。でも、1軍で投げて経験して、まず1勝をとって、さらに勝利数を重ねていく。イメージ通りにも来ているし、ちょっと焦らないといけないという思いもあります」

プロとしての自覚は十分だ。高卒新人は体力強化など土台を固め、2~3年後に1軍で活躍――といった思考もあるが、森木が思い描くものはその上をいく。アマチュアからステージを上げ、プロ野球選手として生きていく思いは誰よりも強い。

「体を作っていくのも大事ですが、もうプロ野球選手という立場。僕は野球で稼がせてもらっている。いかに1軍で活躍してチームの勝利に貢献できるようになるかが一番大事。1年目からガツガツいきたい」

中学時代から注目を浴び、昨年のドラフトで阪神から1位指名を受けた【写真:宮脇広久】

中学時代から武器の150キロを超える直球も「全然、大した数字じゃない」

森木の代名詞といえばストレート。中学時代から軟式で150キロを記録し、高知高に進学後もブレることなく投球の軸として磨き続けた。猛虎ファンが期待する大台到達。だが、本人は“スピード”や“数字”には興味を示さない。

「僕自身、真っすぐが一番得意の球というのは自覚しています。真っすぐがないと変化球が生きない。こだわり始めたのは中学生ぐらいですが、高校、プロに入ると僕ぐらいの球速を投げる人はたくさんいます。全然、大した数字じゃない。そこはもっと上げていけるのが自分の伸びしろ。自分のストレートにどういう意味づけをするか。まずは勝てる投手になりたい」

「(ファンの期待を)感じるときはありますが、そこは楽しんでもらえればいいと思う。僕自身はそこ(球速を求め)にいくと、自分を見失うことになるので。まずは目的を果たせることが一番だと感じてます」

近年はオリックスの宮城、ヤクルトの奥川、ロッテの佐々木朗ら若くしてチームの主力として活躍する高卒投手が多い。森木自身も早くから1軍の舞台を経験し、その後にステップアップしていく姿を目に焼き付けていた。

「高卒、2年目ぐらいから出てくる投手は能力が高い。ボールの質も他の人と違うものを持っている。自分もああいう風になりたいというか、1軍で投げたい。それを実現できるかどうかは日々の練習だと思う。それが出来る人が早めに出ている」

同郷の大先輩・藤川球児から得たもの「変な言い方ですが“楽に投げる”ことが大事」

春季キャンプ中には憧れ続けた同郷の大先輩・藤川球児氏からアドバイスも受けた。火の玉ストレートで打者を粉砕したレジェンドの言葉にはプロで生きていくヒントが隠されていたという。

「僕自身、腕が振れすぎている。理想形は7、8割の力感で、他の人が100%で投げるボールを出せるようにすること。その部分は球児さんも仰っていた。毎日キャッチボールや投げたりする中で、力感を調整して、体の使い方で投げる。変な言い方ですが“楽に投げる”ことが大事なのかなと」

阪神の先発投手陣は青柳、秋山、西勇、伊藤将、藤浪ら実績豊富な面子が揃っている。今後は2軍でイニング数を増やし、こだわりを持つ先発投手として1軍を目指すことになる。

「1年目から勝てる投手になりきるのは無理だと思う。長いスパンで見るなかで、その材料はこの1年で絶対に得られると思う。それをインプットしながら体現していけるようにしていきたい」

高校時代には立てなかった甲子園のマウンド。将来のエース候補として期待される右腕は着実に一流への階段を上っている。大歓声を浴び、打者を牛耳る姿を見られるのは、そう遠くはないはずだ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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