ウクライナ侵攻で議論が活発化…日本は“核共有”をすべきなのか?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。3月7日(月)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、“核共有”について深掘りしました。

◆ウクライナ侵攻で浮上した"核共有”議論

緊迫するウクライナ情勢に関連し、日本でも核兵器を他国と共有する「核共有」についての議論が活発化しています。その端緒となったのが、ロシアの同盟国であるベラルーシの憲法改正です。

2月27日、ベラルーシは憲法を改正し、ロシアの核兵器の配備を可能に。これはつまり核共有に他なりません。

この改憲は国民投票の結果とされていますが、ベラルーシ国民からは不満の声が多く、キャスターの堀潤が取材したベラルーシの方も「今回の投票はほぼ100%反対だと思うが、政府が都合のいい数字にしている」と話しているそう。

そして、日本でも安倍元総理がテレビ番組で「核共有政策を日本でも議論すべき。世界の安全がどのように守られているのか、現実の議論をタブー視してはならない」と発言。日本でも核共有をすべきなのか、一躍大きな話題になりました。

この安倍元総理の発言の背景には、ウクライナが1994年に交わした「ブダペスト覚書」があります。これは、ソ連崩壊に伴う独立後、ウクライナは有事の安全保障をロシア、アメリカ、イギリスと約束する引き換えに核兵器を全て廃棄するというもの。

しかし、現状その約束は守られていません。その件について、安倍元総理は「あのとき、戦術核を一部残していたらどうだったかという議論もある」と話しています。

◆核の抑止力が戦争を回避する…一方で核共有は!?

こうした状況にNPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、「核兵器を廃絶し、核のない世界が理想というのはよくわかる。当然そこを目指さないといけないが、核の抑止力が大国間の衝突を防ぐ役割は間違いなくある」と言います。

ただ、核共有が抑止力になるかというと「そうは思わない」と懐疑的な姿勢を見せます。大空さんは、核共有は大陸間弾道ミサイル等の戦略核よりも小型で威力が小さい戦術核であり、日本では起爆スイッチの主導権もアメリカにあるため、「抑止力になるとは考えにくい」と主張。さらには、「日本は非核三原則もあり、その兼ね合いも考えなければいけない」と言い、「抑止力にならないのであれば核共有をする意味はない」と断言。

現在、核兵器の保有数は、ロシアがトップの6,200以上。次いでアメリカが5,500以上の核を保有しています。

一方、核共有はドイツやイタリア、オランダなどが行なっており、NATOでは核を持たない加盟国がアメリカの保有している核兵器を配備し、搭載用戦闘機も共同運用しています。

食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さんは、安倍元総理同様、核共有の議論を「タブー視してはならない」と標榜。「核がない世界を目指すのは当たり前で、そうすべきだが現状はそうではないので、各国の状況や最悪の場合などを考えて機能するということは必要だろうとも思う」と自身の見解を述べます。

◆核共有は、核の抑止力にはならないのか

核共有に対する政界の反応を見ると、岸田首相は「唯一の戦争被爆国であり、被爆地出身の首相として、核による威嚇も使用もあってはならない」と声明を発表する一方で、自民党の高市政調会長は「危機的状況になった時に例外を作るかどうかの議論は封じ込めるべきでない」としています。

そして、日本維新の会の松井代表は「核を持っている国が戦争を仕掛けている。議論するのは当たり前」、立憲民主党の泉代表は「何かの危機に乗じた核の議論はあってはならない」、共産党の志位委員長からは「プーチン政権と同じ立場に身を置くことになる」といった発言が出ています。

一連の反応に、大空さんは「核保有国でこれまで侵略を受けた国はどこにもない。核抑止力があることで戦争を防げる側面があることも事実」とリアリストとしての意見を述べた上で「核共有はその抑止力にならない。やる意味はほとんどない」と改めて強調。

そして、核共有よりも「日米で核の拡大をいかに防いでいくのかというような議論をするべき」と提言。ドイツやイタリアなど既にNATOの枠組みのなかで核共有をしている国は「アメリカとしっかり対等に話している国」と言い、「日本はそうではない。核共有とは別の選択肢があるのではないか」と訴えます。

◆核や軍事力以外に、日本はいかにして安全を保障していくべきか

では、核を含む軍事力以外でいかに和平を保つべきなのか。長内さんは「日本は特に戦争とは遠い国であって然るべきという思いが当たり前にあり、ことZ世代はそうした教育を受けてきたが、そうではない。現実問題として(戦争に関して)話すべき、もっと理解することがまず必要だと思う」と持論を述べます。

他方、大空さんは「日本は独自の外交をやるべき」と力説。「日本は北方領土問題も抱えており、それはアメリカもNATOもウクライナも助けてくれない。日本が解決しないといけない問題なので、日本は日本なりの独自の対話型の外交を進めてもらいたい」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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