「人間を人間として扱って」 ベトナム人男性、医療支援の不備指摘 入管6年収容後に在留許可 大村

在留カードを手に「入管には変わってほしい」と訴えるフンさん(中央)=大村市水主町2丁目、カトリック水主町教会

 大村入国管理センター(長崎県大村市古賀島町)に6年以上収容されたベトナム人のグエン・バン・フンさん(49)が15日、在留特別許可が認められ、出所した。同市内で支援者らと会見し、長期収容の苦しみや医療支援の不十分さを指摘。日本の入管行政に対し「人間を人間として扱ってほしい」と求めた。
 支援者の一人で長崎インターナショナル教会の柚之原(ゆのはら)寛史牧師は「これまで(複数の収容者を)支援してきた中で在留許可が出るのは珍しく、画期的な対応」と評価。昨年、名古屋市の入管施設でスリランカ人女性が死亡した問題を踏まえ、「これ以上死者を出してはいけないとの意識が働いたのではないか」との見方を示した。
 フンさんによると、1989年、17歳の時に来日。木造船でベトナムから逃れてきた「ボートピープル」の一人だった。インドシナ難民として関東で生活したが、40歳の頃、生活に行き詰まって食料を盗み、刑務所で服役。2015年から大阪、大村の入管施設に収容されていた。
 収容生活についてフンさんは「期間が決まっていないため刑務所以上に苦しく、何度も自殺を考えた」と振り返った。途中、甲状腺に腫瘍が見つかったが、積極的な治療を受けられなかったと主張。腫瘍は現在4センチまで肥大しているという。
 収容の長期化と病状悪化を理由に今年1月、在留許可を求める再審情願を提出。支援者が約千人分の署名を集め大村入管に提出した。15日に在留カードを発行されたフンさんは今後、県内で治療を受けながら生活基盤を整える意向。「初めて大村の町を歩き、人間に戻れたと実感している。ただ、ほかの収容者が心配。入管にはぜひ変わってほしい」と話した。
 大村入管は800人が収容可能だが、柚之原牧師は現在かなり少ないとして「ウクライナ難民の受け入れに活用できるのではないか」と述べた。


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