米原潜の佐世保寄港、2年間「ゼロ」 米軍/コロナで最小限に 識者/中国対策も関係か

佐世保に入港した米原潜ミシシッピ=2019年12月15日、佐世保港

 米海軍の原子力潜水艦が2020年3月1日を最後に2年間、長崎県佐世保市へ寄港していない。米海軍は取材に対し「新型コロナの世界的流行の期間を通じ、展開するすべての艦船の寄港を最小限にとどめている」と回答。一方、識者からは中国が強化している「アクセス阻止、エリア拒否(A2/AD)」戦略も関係しているのではないかという見方も出ている。
 国内での米原潜の寄港先は佐世保のほか、原子力空母の母港である横須賀、在日米軍基地が集中する沖縄の計3カ所。佐世保への寄港は1964年のシードラゴン以降、通算444回を数える。市が公表する寄港歴では過去5年(2017年以降)で、米原潜が半年以上寄港しなかった例はない。海上自衛隊の元海将で、潜水艦艦長も務めた金沢工業大虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は、現状について、コロナ対策に加え、中国のA2/AD戦略への対応もあるのではないかと分析する。
 A2/ADは、他国軍を自国の作戦領域に入らせず、仮に入られても行動の自由を制限する戦略。中国は近年、中距離弾道ミサイルなどが在日米軍基地を直接狙える能力を備えるようになった。そこで、米軍は爆撃機や海兵隊をオーストラリアなどへ一時的に移動させる巡回駐留へシフトしているという。原潜もこうした動きを意識し今まで以上に「居場所を悟られない動き」をしている可能性がある。伊藤教授は「佐世保は中国と距離が近い。寄港するにはリスクがある」とみる。
 一方、横須賀の過去5年の寄港歴を見ると、変動はあるものの「寄港ゼロ」の年はない。「横須賀は原潜の修理、整備機能を持つが佐世保にはない」。伊藤教授は2拠点の違いに触れ「補給や休養目的の佐世保と違い、横須賀への寄港は避けたくても避けられないのだろう」とする。
 米軍の動向を監視するリムピース編集委員の篠崎正人氏は、長期間寄港しないことで、佐世保へ寄港するための手続きや手順が順調に行われるか懸念が出てくる可能性に言及。手順確認の必要性が出れば「寄港するだろう」との見方を示している。


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