<食文化>ハンバーガー伝来の地 基地の街ならではの名物 サセボのキセキ 市制施行120周年④

ハンバーガーショップ「ヒカリ」を創業した藤谷さん=佐世保市矢岳町

 長崎県佐世保は「ハンバーガー伝来の地」と言われる。米海軍基地が置かれ、米兵相手の商売で活況を呈した1950年ごろ、基地関係者から市民にレシピが伝えられたとされる。
 矢岳町にある老舗のハンバーガーショップ「ヒカリ」を訪ねた。人気メニューの「スペシャルバーガー」を注文して食べてみる。合いびき肉のパティとベーコン、チーズ、卵、野菜が入ってボリューム満点だ。

「ヒカリ」のスペシャルバーガー

 創業した藤谷英則さん(86)によると、ハンバーガーを売り始めたのは約70年前。もともとこの場所では、藤谷さんの父が米兵向けの貸自転車業などを営んでいた。米兵たちは街で夜遅くまで酒を飲み、自転車を返しに来る時はいつも腹をすかせていたという。
 「米国ではハンバーガーというものを食べるらしい」。そう聞いた藤谷さんが基地関係者から作り方を教えてもらい、販売したところたちまち人気に。同じ時期、基地近くにはハンバーガー店が次々とオープンした。
 2000年代初めから佐世保観光コンベンション協会などが「佐世保バーガー」による観光客誘致に力を入れ、全国にその名が知れ渡った。「ヒカリ」にも県外から多くの客が訪れ、最盛期には3~4時間待ちの行列ができた。現在も週に一回は店に立つという藤谷さんは「佐世保の発展に貢献できたと思う」と胸を張る。

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 鉄板で焼かれる薄切りの牛肉と、レモン果汁がたっぷり入ったソースの香りが食欲をそそる。レストラン「下町の洋食 時代屋」(吉福町)の初代オーナー、東島洋さん(77)が約半世紀前に考案した「レモンステーキ」も、佐世保名物として知られている。

「下町の洋食 時代屋」のレモンステーキ

 東島さんは20代のころ、米兵に人気のレストランで料理長として働いていた。同じく料理人だった兄が勤める店から「夏にさっぱり食べられる新メニュー」の開発を依頼され、考え出したのがレモンステーキだ。
 自分の店を開いた後も提供を続けたが、単なるメニューの一つだった。これを名物料理にしようと改良を重ねていたころ、インターネットが普及。全国で「ご当地グルメ」が注目され始めたことも追い風となり、知名度が一気に高まった。  ◆
 「海軍さんのビーフシチュー」や「入港ぜんざい」も、佐世保ならではのグルメとして愛されている。九十九島ではカキやトラフグの養殖が盛ん。「九十九島かき食うカキ祭り」は秋冬の恒例行事だ。

 =次回のテーマは「音楽」。19日掲載予定です=

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