50歳独身、70歳時まで働いた後の「終の住処」は高齢者施設かマンション購入か?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、50歳独身の会社員の方。月の手取りは23万5,000円、現在の資産は1,000万円程度。毎月、個人年金も含めて5万3,000円プラス1〜2万円を貯蓄しており、将来は高齢者施設に入居しようと考えていますが、物件を購入したほうがいいか迷っているといいます。FPの飯田道子氏がお答えします。


50歳独身の会社員です。老後のプランについて相談させてください。

毎月の貯蓄は個人年金も含めて5万3,000円プラス余剰分で1〜2万円しているのですが、年金と老後資金で人生100年時代を乗り越えられるか心配です。

生活レベルは今から縮小して年金で暮らせる程度まで慣れていこうと考えています。資金は減らしたくないので、70歳くらいまではパートでもいいので働き、70歳には老人ホームに入ろうと思っています。70歳までの賃貸暮らしと入居の資金を考えて、今の資金計画で、賄えますでしょうか?

それとも、賃貸ではなく70歳まで住めるような中古マンションを、65歳でローンを完済できるように購入したほうがいいか迷っています。アドバイスお願い致します。

【相談者プロフィール】

・女性、50歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(東京都、一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:23万5,000円

・ボーナスの有無:なし

・毎月の世帯の支出の目安:17万2,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:6万7,000円

・食費:2万3,000円

・水道光熱費:1万円

・保険料:2万円

・通信費:1万円

・お小遣い:7万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):600万円

・現在の投資総額:2万3,000円

・現在の負債総額:0円

・老後資金:公的年金が月12万円、退職金なし、個人年金はiDeCo350万円、農協とアフラック合計700万円

飯田:今回は、老後のプランを心配している50歳の相談者様です。生活レベルは、将来を見据えて、年金で暮らせる程度まで慣れていこうと考えているものの、70歳までは働く予定とのこと。その後は、高齢者施設の入所を希望していますが、70歳まで賃貸か、それとも65歳完済でローンを組み、中古マンションを購入し70歳まで住んで老人ホームへ入所する方がいいのか迷っているようです。相談者様の場合、70歳までの住居費用と高齢者施設へ入所するための資金計画に問題はないでしょうか。また、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

賃貸で住み続ける?マンションを買う?

相談者様のライフプランのなかで、マイホーム資金と高齢者施設への入所費用という2つの大きな決断があります。

まず、今まで通り70歳まで20年間、賃貸で暮らしていくと、現在の賃貸料の6万7,000円が維持されていくと仮定した場合、年間で80万4,000円。20年間で1,608万円かかる計算になります。

現在、どのような中古マンションが販売されているのかを調べてみました。都下で1Kなら500万円を切った物件はありますが、通勤に不便になることは間違いありません。23区内にも1,000万円を切る物件はあるのですが、専有面積20㎡前後と手狭になってしまいます。

たとえば23区西部エリアに築34年の物件の場合です。1 K、専有面積16.8平米、駅近でありながら、管理費と修繕積立金を合わせ1万3,000円程度、物件価格750万円でした。管理費と修繕積立金がこのまま上昇しない場合には、312万円かかります。その他にも固定資産税がかかりますが、購入費と諸費用をあわせても、購入したほうが費用はかからないでしょう。

ただし、購入した物件をそのまま維持する場合は、管理費と修繕積立金および固定資産税がかかってしまいます。また、売却する場合は、その時点で築年数は50年を超えてしまいますので、マイナスにならなければよし、と考えておくといいでしょう。

※参考:固定金利1.60%、借入期間15年、借入金600万円の場合、毎月の返済額3万7,515円、年間の返済額45万180円、総返済額675万2,700円 。諸費用約23万円。

物件の価格が600万円程度なら購入計画は成り立つ

物件に関する希望は分からなかったため、筆者が探した物件を例に比べていますが、購入する場合は、どこで、どのような物件に住みたいのかによって、購入費用は変わってきます。必ず、実際の物件で比較するようにしてください。

ここで取り上げた物件であれば、購入したほうが支払いコストは少なく済みます。また、駅近のため、築年数を重ねたとしても、入居者は見つかる可能性は高くなりますので、賃貸に回して収入を得るという方法も考えられるでしょう。ただし、賃料として得られるのは、毎年の諸費用が賄える程度の可能性が高く、賃貸収入を期待するのは、やめたほうがいいでしょう。

実際に、ここで取り上げた物件よりも価格の安い物件はありましたし、新たにお眼鏡にかなう物件が販売になるかもしれません。

かかるコストのみを考えれば、マンションを購入したほうが費用を抑えられる可能性はあります。ローンを600万円程度までに抑えられるなら、資金計画は成り立ちます。

高齢者施設は、入所一時金の金額次第

老人ホームとおしゃっていますが、高齢者向けの施設は、さまざまな種類のものがあります。

現在の預貯金は600万円、個人年金がiDeCo350万円、農協とアフラック合計700万円です。支出の内訳の合計するとひと月20万になっており、個人年金5万3,000円を積み立てると手取りをオーバーしてしまうので、ひとまず貯蓄は「毎月の貯蓄額」に記載いただいた2万円として計算していきます。2万円を20年間続けていれば、480万円上乗せすることができますので、預貯金は1,080万円になり、20年後の総資産は2,130万円となっている計算です。

この場合だと、相談者様がおっしゃっている施設がどのようなものをイメージしているのかは分かりませんが、入所一時金を支払う終身介護付き有料老人ホームでは、入所金は足りないでしょう。

また、入所一時金が50万円以下の施設の場合、毎月の費用だけで12~15万円が相場ですので、年金で何とか賄える状態にあります。もちろん、地方と都内ではかかる費用も変わってきますので、預貯金があることを考えれば、入所一時金が0円から50万円程度のところへ入所することは可能でしょう。ただ、マンションの購入と同じように、物件によってかかる費用は違ってきますし、入所できる施設を必ずしも気に入るとは限りません。

もし、毎月5万3,000円の貯蓄ができていれば、選べる施設の幅は広がるでしょう。

物件を具体的にイメージすることからスタートする

相談者様にやって欲しいことは、マンションを購入するにしても、高齢者施設に入所するにしても、どのようなところへ住みたいのかをイメージして、実際の費用を確認することです。そして、実際に見学に行き、施設の場合は体験入居もしてみましょう。

また、毎月の支出のなかで、お小遣いが7万円なのは、すべて自由に使っているのだとしたら多すぎます。将来を見据えて節約するのなら、お小遣いを3万円にすれば、4万円は浮きます。60歳までの10年間だけでも4万円上乗せして貯金できれば、さらに480万円、手持ちのお金が増えることになりますよ。

頭で考えたことと、目で見たこと、体験したことでは違いがあります。まずは具体的に確認、体験することです。まだ50歳です。あと20年働く意思があるのですから、じっくりと見て、感じて決めてください。体験しながら楽しんで、ライフプランを立ててみてはいかがでしょうか。

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