横須賀遺族会が正式解散「風化」懸念し胸中複雑 高齢化で県内初

 県遺族会の加盟組織で、横須賀市内の戦没者遺族でつくる横須賀遺族会が29日、臨時総会を開き、正式に解散した。現在56団体が加盟する県遺族会で、市町村単位の組織が解散するのは初めて。発足から69年余にわたる同会の歴史に、幕が下りた。

 横須賀遺族会は1946年8月に県遺族会横須賀支部として創設。市が毎年5月に開催する「戦争犠牲者を慰め平和を祈念する集い」や8月の「戦没者追悼式」などに協力してきた。

 横須賀には戦前、旧海軍が横須賀鎮守府を構え、戦後には浦賀港が外地からの引き揚げ者を受け入れる港となった歴史がある。

 遺族会も多い時は戦没者の妻ら約4千人の会員を抱えていたが、徐々に減少し、現在は400人ほど。会員の高齢化が進み、子や孫世代の担い手不足も顕著になり、組織が維持できなくなった。

 臨時総会で、横須賀遺族会の三上範雄会長(84)が解散を宣言すると、会場で涙を流す会員もいた。三上会長は「ほっとした気持ちもあるが、本心では悲しい。今は孫の代になって、『戦争なんてあったのか』という時代。何とかして残そうと頑張って続けてきたつもりだが」と複雑な胸中を明かした。

 旧陸軍の父を亡くした女性会員(75)は「戦死者の供養は、国や行政にしっかりやってもらわないと風化してしまう」と、全国的に衰退する遺族会共通の課題を指摘した。

 県遺族会に加盟する会員は現在計1万3千人で、平均年齢は75歳。遺族会存続のために、上部組織の日本遺族会では、一般人の受け入れも視野に間口を広げる議論も出ている。

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