長崎の観測地「日本天文遺産」に 1874年の〝金星太陽面通過〟 記念碑など残る 神戸、横浜も

長崎金星観測碑(日本天文学会提供)

 日本天文学会は、金星の太陽面通過を観測し、当時の観測台や記念碑が残る長崎、神戸、横浜の3市の観測地を本年度の「日本天文遺産」に認定した。
 日本天文遺産は同学会が歴史的に貴重な天文学・暦学の資料を後世に伝えるため2018年度に創設。本年度は、24件の候補の中から同観測地など2件が選出された。これで同遺産は計10件となった。

長崎金星観測台(日本天文学会提供)

 金星の太陽面通過は、金星が太陽と地球の間を通過し、100年に2回程度しか起こらない非常にまれな現象。当時、観測により太陽と地球の距離が算出できると考えられていた。1874年12月9日、外国の観測隊が長崎、神戸、横浜で金星の太陽面通過を観測した。太陽と地球の距離は、さまざまな手法で求められてきたが、この観測は、国際的に意義深い出来事の一つとなった。さらに、外国観測隊の来日は、日本の天文学に大きな影響を与えた。

神戸の金星過日測検之処碑(日本天文学会提供)

 観測地は、長崎では、フランス隊が金比羅山(長崎市西山町)、米国隊が大平山(現・星取山、長崎市上戸町)。

横浜の観測台(日本天文学会提供)

神戸では、フランス隊の分隊が諏訪山(現・諏訪山公園)で、横浜では、メキシコ隊が野毛山(現・個人宅内)と山手本村(現・フェリス女学院高内)。このうち、金比羅山に観測碑と観測台、諏訪山公園内に記念碑、個人宅に観測台が残されている。当時の出来事を伝えるものがあるとして、この3地点を認定した。

 県天文協会の松本直弥会長=佐世保市=は県内初めての認定で「非常にうれしい。近代的な観測だったため意義が大きい。今回を機に保存状態を改善してほしい」と話した。


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