田辺市龍神でジオパーク学習会 研究会「活用の機運高めたい」

「檜皮の滝」を訪れた田辺ジオパーク研究会の会員(和歌山県田辺市龍神村柳瀬で)

 和歌山県田辺市や周辺の住民有志でつくる「田辺ジオパーク研究会」(藤五和久会長)は、市内各地の自然資源を調査して魅力を掘り起こし、発信するための活動を続けている。13日には会員が同市龍神村で見どころを巡った。「ジオパークという観点で活用する機運を高めたい」という。

 研究会は2015年1月に発足し、市内にある地質や地形の見どころなどを探し出して調査や研究をしてきた。会員が知識を深めるための勉強会や現地学習会は毎月のように開いている。一般向けの講演会や現地ツアーは、ここ2年間ほどは新型コロナウイルスの影響で中止しているが、それまでは毎年開いてきた。

 13日の現地学習会には会員31人が参加し、龍神村の各地を巡った。

 柳瀬の日高川にある「檜皮(ひわだ)の滝」では、会員で南紀熊野ジオパークガイドの上森安さん(71)=龍神村龍神=が説明した。川底や両岸が黒っぽくて荒々しい岩盤になっており、それがヒノキの皮のようであることから名付けられたという。激しく蛇行した箇所があり、かつて盛んだった山から切り出した木材を運ぶ筏(いかだ)流しでは、難所だったことも紹介した。

 1889(明治22)年8月の大水害で、下柳瀬地区で発生した深層崩壊による土砂ダムの跡地も訪れた。案内役を務めた地元区長の吉本志朗さん(70)が「合併で誕生したばかりの中山路村の中心地一帯が水に漬かり、83人が死亡した」と説明した。復興に50年ほどかかり、1938(昭和13)年に水難者慰霊碑が建立されたことにも触れた。

 龍神村龍神の龍神温泉も訪ねた会員は、自然湧出泉だけでなく、ボーリング泉を活用し、温度は48度で風呂に適していることなどの説明を聞いた。木のように見える特徴的な地層「グルーブキャスト」を観察したり、小説にも登場する「曼荼羅(まんだら)の滝」を訪れたりもした。

 上森さんは「龍神村には他にも、赤壺の滝や白壺の滝がある小森谷渓谷、丹生ノ川の環流丘陵など見どころはある。豊かな自然資源をもっとPRしていきたい」と話す。

 田辺市は、日本ジオパークに認定されている「南紀熊野ジオパーク」のエリアに含まれておらず、昨年夏、自然資源の価値を再発掘し活用に向けた研究をするための専門委員会を発足させ、調査研究をしている。

 田辺ジオパーク研究会は「貴重な地域資源を守り、活用するためにもジオパークの認定は必要」としており、藤五会長は「田辺市にはたくさんの見どころがある。市民にもっと興味を持ってもらえればと思う」と話している。

地元の吉本志朗区長(右)から土砂ダムについて説明を聞く会員。右奥には水難者慰霊碑がある=和歌山県田辺市龍神村柳瀬で

© 株式会社紀伊民報