ラッシュ、2023年までに日本での同性婚法制化目指しキャンペーン

英コスメブランド・ラッシュは17日から、日本における同性婚の法制化に向けた啓発キャンペーンを展開する。期間中、限定販売するチャリティ商品の売り上げの全額を公益財団法人Marriage For All Japanに寄付するほか、7月に予定される参議院議員選挙前のタイミングで同法人と連携した活動を全国の店舗や公式サイト上などで展開。一企業として2023年までに同性婚の法制化を強く求める姿勢を打ち出し、日本社会において「結婚の自由をすべての人に」を掲げるムーブメントへとつなげることを目指す。(廣末智子)

ラッシュはブランドとしての価値観を行動指針に掲げる中で、人権問題の中でも特にLGBTQ +の人たちの支援に早くから力を入れてきた。日本でも2014年から東京・渋谷で毎年開催されるパレードに参加するなど、性的少数者への差別や偏見をなくす取り組みを継続している。

多様な愛のカタチを表現 チャリティー石けんを限定販売

今回のキャンペーンは、一刻も早く、日本での同性婚の法制化を実現するには今年7月の参議院議員選挙で一人でも多くの同性婚賛成派議員が当選し、国会で法制化に向けた議論が推進されることが必要であると捉え、公益財団法人Marriage For All Japan(港区・南青山)の活動を後押しする形で進めるもの。17日を開始日としたのは昨年のこの日、札幌地裁で「国が同性婚を認めないのは違憲」とする歴史的な判決が出たのを祝福する意味合いからだという。

同法人は、同性婚の法制化を目的に設立された団体で、性的マイノリティの人権についてさまざまな分野で活動してきたメンバーが、結婚の平等を求める訴訟の支援や、国会議員への法律改正の働きかけなどを行っている。その世論喚起の方法の一つとして企業による賛同可視化のためのプラットフォームである「ビジネス・フォー・マリッジ・イクオリティ」を立ち上げて企業と共に活動を推進しており、ラッシュとの連携もそうした中から生まれた。

ラッシュによると、キャンペーンは17日から31日までを第1フェーズとし、多様な愛のカタチを表現したハートに、結婚の平等を表す=(イコール)の記号をあしらった石けんを税込800円で3500個限定販売。それと同時に全国の75店舗と公式サイトなどで、Marriage For All Japanが発信する日本に暮らす同性カップルの日常を切り取り、結婚の平等に対する思いを伝える動画コンテンツなどを公開し、性的マイノリティの人たちへの正しい理解を広め、同性婚への賛同の声を上げてもらうよう啓発する(17日には午後6時半から公式YouTubeチャンネルでオンライントークイベントを行うほか、LUSH新宿店で日本に暮らす同性カップル4組とピアノ演奏者によるサイレントデモを開催予定)。

第2フェーズは参議院選挙を目前とするタイミングで行い、石けんの寄付金で制作される予定の新たな動画の公開などを通じて、同性婚の法制化に賛成する議員を一人でも多く選出するよう、キャンペーンを選挙結果に反映させることを目指す。

G7で唯一、同性カップルに法的補償がない日本

世界では現在、30の国と地域で同性婚が法律で認められているのに対し、日本はG7の中でも唯一、同性カップルに法的補償がなく、OECDの35カ国の中でも性的マイノリティに対する法整備の進捗具合は34位となっている。一方で150以上の地方自治体が同性カップルに対するパートナーシップ制度を導入するなど、同性カップルの関係性を公に認める流れが急速に広がっているが、制度に結婚のような法的効果はない。

法律による結婚ができないということは、法定相続権や共同親権、配偶者控除といった権利や利益が与えられないことを意味する。そればかりか、当事者は国が同性カップルを、異性カップルと同じように保護すべき対象ではないというマイナスのメッセージを発していると捉え、将来の家族像を思い描くことができずに命を絶ってしまうケースも起きている。異性愛が普通であるとされる中では性的マイノリティが自己肯定感を保つことは難しい。

そのような背景から、ラッシュは「結婚は誰もが平等に持つべき権利であると考える。結婚をするかしないかは個々の自由だが、私たちが暮らす日本社会で、同性同士というだけの理由から、結婚の権利が奪われてしまう環境は、人権にかかわる問題だ」とする考えを表明。今回のキャンペーンには、「次世代が当たり前に結婚という選択ができる社会をつくるべく、結婚の平等についての会話を促したい」とする思いも込めているという。

なお同社は2015年から全社員に対し、異性間の夫婦同様、同性間のパートナーにも結婚祝い金の支給や結婚休暇などの福利厚生を実施。性適合手術を受ける場合も傷病休職と同様の扱いとし、手術後に安心して復職できる職場環境を整えている。また求人のエントリーシートの性別欄も撤廃し、性別や年齢、国籍、人種、宗教、障がいの有無などにかかわらず、「その人自身と向き合う」採用を行なっている。

このほどキャンペーンに先立って行われたオンライン会見では、執行役員の小林弥生氏が、「私たちは日本においては75店舗とオンラインショップを最大のメディアだと考え、さまざまな社会課題についてお客様を巻き込んで一緒に行動していくことを大切にしている。同性婚を巡る問題は重要な人権問題であり、行動を起こすのは企業責任だ」と説明。同席したMarriage For All Japanの寺原真希子代表は、「同性婚の法制化は、そのうち、いつか実現すればいいというものではない。今この瞬間も同性婚ができないことで生き悩んでいる人たちがたくさんいる。性的マジョリティにはマイノリティの人権が侵害されている現状を変える責任がある。1日も早い同性婚の実現に向けて誰もに自分ごととして取り組んでもらえたら」とキャンペーンへの期待を語った。

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