小6で神宮スタンド中段まで飛ばした超逸材 “賢い進路”を選択…見据える6年後

ドラゴンズジュニアの一員として活躍した小久保颯弥くん【写真:川村虎大】

NPB12球団ジュニアトーナメントでMVPに輝いた小久保颯弥くん

寒風が身に染みる2021年の年の瀬。神宮球場がどよめきに包まれた。小学6年生が放った打球は、大きな放物線を描いて左翼スタンド中段まで届いた。“120メートル弾”に、誰もが目を疑う。「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2021」で最も注目を集めた超逸材。優勝した中日ドラゴンズジュニアの一員として大会MVPに輝いた小久保颯弥くんは、早くも6年後を見据えているという。【小西亮】

【実際の映像】小学6年で神宮球場スタンド中段まで飛ばした小久保颯弥くんの“衝撃グランドスラム”

昨年12月30日、福岡ソフトバンクホークスジュニアとの大会準決勝で衝撃の一発が飛び出した。延長8回の無死満塁で、2ボールから来たファーストストライクを振り抜いた。「狙っていました。完璧です。あんなに飛んだのは初めて」。グラウンドに設置された小学生用の“外野フェンス”なんて軽々と越え、客席に飛び込む特大グランドスラムになった。

大会では本塁打が量産され、ミズノ社製のバット「ビヨンドマックスレガシー」が一因とも言われた。ただ、元プロで中日ジュニアの湊川誠隆監督は「いくらバットが良くても、小学生であんなには飛びませんよ」と驚きを隠さない。

身長173センチ、体重65キロ。すでに大人のような体躯を誇る。湊川監督も「すごいです。走るのも速くて、運動能力が高い。順調に背が伸びて怪我をしなければ、メジャーに行くくらいの逸材だと思う」と冗談抜きに言う。野球を始めた小学1年から抜きん出た存在で、学校でもかけっこは一番だった。

当然、投げても超一級品。「マックスは125キロです」。小学4年生ごろまでは最速100キロ程度だったというが、5年生になったころから20センチほど急激に身長が伸びた。体の成長と比例するように、球速も20キロ以上アップした。

中学で最速140キロ、高校で最速155キロ&通算100本塁打が目標

早くも周囲からは「二刀流」への期待が聞こえてくる。エンゼルスの大谷翔平投手を引き合いに出す人も少なくないが、いま楽しいのは投手よりも野手。「ピッチャーは打たれたら精神的に終わるんで(笑)。バッターは、普通に打てて楽しいから」。はにかむ表情は、やはり等身大の小学6年生。パドレスのフェルナンド・タティスJr.やヤンキースのアーロン・ジャッジに憧れる。

まだまだ夢見る野球少年。ただ、自らの歩む道は、実に冷静に考えている。強豪「愛知名港ボーイズ」に所属する中学での3年間は「ピッチャーはあまりやらないと思います。中学で体力をつけて、高校で勝負するって感じです」。肩肘を消耗させず、ベースとなる土台づくりを最優先。指導者に相談しながら、先を見据えて逆算している。

プロに向かうための“通過点”も設定している。「中学を卒業するときには最速140キロくらいは出したい。高校卒業のときは155キロくらいいきたいです」。打者としては「高校で(通算)100本くらい打っていると思います」。すでに6年後の姿が見えているように言う。

“大谷みたいな選手”を目指すのではなく「大谷翔平選手を追い越す選手になれるように頑張っていきたいです」。全く物怖じしない姿には、すでに雰囲気も漂う。「自信があります」。当たり前のように言い切るのも頼もしい。度肝を抜いた衝撃アーチは、ほんの序章にすぎない。

【実際の映像】小学6年で神宮球場スタンド中段まで飛ばした小久保颯弥くんの“衝撃グランドスラム”

【実際の映像】小学6年で神宮球場スタンド中段まで飛ばした小久保颯弥くんの“衝撃グランドスラム” signature

(小西亮 / Ryo Konishi)

© 株式会社Creative2