全国高校選抜大会 長崎県勢挑む ソフトボール 双子で出場!樋口兄妹

全国高校選抜ソフトボール大会に男女の双子でダブル出場する大村工の樋口優斗(右)と向陽の琴音=諫早市

 全国高校選抜大会は18日に競技がスタート。19日からは長崎県勢も各競技に登場する。ソフトボール(男子=25~28日・岐阜、女子=19~22日・広島)に出場する男子の大村工、女子の向陽には、それぞれ樋口優斗、琴音の双子の兄妹がメンバー入り。未熟児で生まれながら、ソフトボールを通してたくましく育った2人が、そろって全国の舞台に立つ。

 予定日より約2カ月早く生まれた二卵性双生児で、出産時の体重は兄の優斗が約1500グラム、妹の琴音は約1400グラム。父の雅臣さんが「ごめんねと思った」と涙ぐんだほど小さく、優斗は間もなく手術も受けた。保育園に通っていたころは、どちらかが病気になれば、治りかけにもう一人が同じ病気になったこともしばしばだった。
 そんな2人を森山西小1年で一緒に始めたソフトボールが変えた。優斗は現在、身長171センチ、体重67キロ。過去に何度も日本一に輝いている強豪校の中で、外野手として汗を流している。激しい部内競争をしながら「一つ一つの成長を感じられる日々」を送っている。
 同じく外野手の琴音は身長154センチ。小柄で性格もおとなしい方だが、今ではチームの主将となり、切り込み隊長の1番打者を任されている。昨秋の県予選決勝は、中学時代に所属していた諫早シャイニングガールズの仲間が複数いる長崎商を破り、チームを18大会ぶりの優勝に導いた。
 家ではテレビのリモコンの取り合いやテストの点数などを巡って「けんかばかり」だが、やっぱり「いないと少し寂しい」という2人。時間が合えば、一緒にキャッチボールやティー打撃などの自主練に励む。「大村工の雰囲気を見て自分たちも頑張ろうと燃える」(琴音)、「キャプテンはすごい。言葉遣いとかも変わった」(優斗)と互いを認め合っている。
 2人のダブル出場を誰よりも喜んでいるのは両親。母、みかさんは毎朝4時半に起きて、朝食や弁当を作り始める。諫早駅まで2人を車で送迎するのは父母の日課。夜は2人の時間が違うため、帰宅するのは午後9時を過ぎる。そんな両親にとって、この春の“快挙”は最高のプレゼント。母は「大変だけど、まさかこんなうれしいことになるなんて」と目を細め、父は「ソフトやそこで出会った指導者、仲間、保護者がいなかったら、ここまでなっていない」と感謝しきりだ。
 全国大会出場は、メンバーとしては初めての優斗に対し、中学時代に経験してきた琴音の方が“先輩”。今回も兄より先に登場する。琴音は「コロナ禍の開催に感謝しながら、最後まで集中して次につなげる」と意気込み、優斗は「一緒に出るからにはどっちも優勝。一つ一つ質を上げて、少しでも多くチームに貢献したい」と誓う。
 最大の目標である夏のインターハイに向けて、この春を貴重なステップにしようと決めている。


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