NASA新型ロケット「SLS」ついにその姿を現す! 本番さながらのリハーサルを実施予定

【▲ ケネディ宇宙センターのロケット組立棟(VAB)から39B射点に向けて運ばれるSLS初号機と移動式発射台(Credit: NASA/Joel Kowsky)】

歴史的な初飛行に向けての大きな前進です。アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間3月17日、開発中の新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」の初号機を組立棟から射点に移動する初のロールアウト(移動作業)を実施しました。

SLSの初号機はNASAの有人月面探査計画「アルテミス」最初のミッション「アルテミス1」に用いられます。アルテミス1はSLSおよびNASAの新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」無人テスト飛行にあたるミッションで、2022年4月以降の実施を予定。SLSで打ち上げられた無人のオリオン宇宙船は月周辺を飛行し、打ち上げから4~6週間後に地球へ帰還します。

なお、SLS初号機には日本で開発された「OMOTENASHI(オモテナシ)」「EQUULEUS(エクレウス)」を含む13機の超小型衛星(CubeSat)も相乗りしています。

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【▲ クローラートランスポーター2に載せられてVABから姿を現したSLS初号機と移動式発射台(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)】

SLS初号機の組み立てはケネディ宇宙センターのロケット組立棟(VAB:Vehicle Assembly Building)に運び込まれていた移動式発射台の上で、2021年10月に完了しました。

その後はVABで各種テストが行われていましたが、打ち上げの状況を模した本番前のリハーサルにあたる「ウェットドレスリハーサル(wet dress rehearsal)」を射点で実施するべく、今回ついにその姿を現したのです。

【▲ NASAのビル・ネルソン長官(右から2人目)と元宇宙飛行士のトーマス・スタッフォードさん(中央)。スタッフォードさんはアポロ計画において月着陸のリハーサルを行ったアポロ10号(1969年5月)で船長を務めた人物(Credit: NASA/Keegan Barber)】

アメリカ東部標準時2022年3月17日17時47分(日本時間3月18日6時47分)、重量約1590トンのSLS初号機は8000トン以上の最大積載量を誇る輸送車両「クローラートランスポーター2」に移動式発射台ごと載せられて、4マイル(6.4km)先にある39B射点を目指して移動を開始。射点には10時間28分後のアメリカ東部標準時3月18日4時15分(日本時間同日17時15分)に到着しました。

【▲ 夜間に撮影された移動中のSLS初号機。先端に搭載されているオリオン宇宙船は、背後で輝く月の周辺まで往復飛行する(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)】

射点に到着したSLS初号機とオリオン宇宙船は、70万ガロン(約270万リットル)以上の推進剤を実際に充填して打ち上げカウントダウンも行う、本番さながらのウェットドレスリハーサルに臨みます。その後のSLS初号機と移動式発射台はリハーサルの数日後に一旦VABへ戻されて、リハーサル時に使用されたセンサーの取り外し、バッテリーの充電、最終チェックなどを済ませた後に、打ち上げ予定日の約1週間前には再び39B射点に運ばれます。

【▲ ロールアウトを終えて39B射点に据え付けられた移動式発射台とSLS初号機。その手前にはクローラートランスポーター2の姿も見える(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)】

前述のように、SLSとオリオン宇宙船の無人テスト飛行にあたるアルテミス1ミッションは2022年4月以降の実施が予定されていますが、具体的な打ち上げ目標日時はウェットドレスリハーサルの結果を確認した後に設定されます。アポロ計画以来半世紀ぶりとなる新時代の有人月面探査、その幕開けを告げるアルテミス1の打ち上げが今から待ち遠しいです。

関連:ロールアウト迫る新型ロケット「SLS」のブースターで輝く“ワーム”ロゴ

Source

  • Image Credit: NASA/Joel Kowsky, Aubrey Gemignani, Keegan Barber
  • NASA \- NASA’s Mega Moon Rocket, Spacecraft Complete First Roll to Launch Pad

文/松村武宏

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