遺産相続で3人に1人が後悔、その理由は?やっておくべきことと、何もせずに親が他界した場合の対策

帰省の度に「今度こそ」と思いつつ、なかなか踏み込めない相続の話。特に、親の資産がいくらあるのかといった話はなかなか聞きづらいですよね。とはいえ、いざ相続となると、何も準備してこなかったことを後悔している人が多いようです。

日本トレンドリサーチ日本クレアス税理士法人が共同で、遺産相続をしたことがある全国の男女1000人を対象にアンケートを実施しました。調査結果を紐解くと、生前にやっておいた方がいいことが見えてきました。もし、親の金融資産がどこにいくらあるのか把握できないまま親が他界してしまったら、どうしたらいいのでしょうか。相続に詳しい専門家に聞きました。


「相続」3人に1人が後悔、その理由は?

遺産相続をする際に、事前にやっておけばよかったと後悔したことは何でしょうか。

調査結果によると、32.8%が「後悔したことがある」と回答。その内容は主に、遺言書について、兄弟間での話し合い、相続税対策、遺産の把握、必要なものの所在についての大きく4つに分かれるそうです。

中でも多かったのが遺言書の作成について。「生前口約束ではなく、正式な遺言書作成をしとけばよかった(60代・女性)」「相続人が数名いる場合は、遺言書などはきちんと公正証書遺言にしておくべき(70代・女性)」といった声が寄せられました。

また兄弟・姉妹間での話し合いでは、「兄弟ですごく揉めて、なかなか相続ができなかった(20代・男性)」という声のほか、「親の死後、遺産の処分について兄弟の了解を得る処置を行えなかったため、今も絶交状態が続いている(70代・男性)」など、相続をきっかけに関係が破綻してしまったという人も。

「終身保険による節税を利用できるようにしておけばよかった(60代・男性)」「予め少しずつでも相続しておけば相続税を払う必要がなかった(40代・男性)」など、生前に相続税対策をしておけばよかったと後悔する声も見られました。

ほか、「どこにどれくらいのお金があるかなどを聞いておくこと(50代・男性)」「やっぱりネットでの銀行口座のやり取りが把握しづらい。事前に知っておかないとアクセスすらできない(50代・男性)」といった声も。相続するにあたり、どこにいくらあるのかといった資産の把握はもちろん、通帳や印鑑などの所在の把握も大切だということがわかります。

親の金融資産を把握していないとどうなるのか

同アンケートでは、「事前にやっておいてよかったことがあるか」についても聞いています。全体の26.3%が「ある」と回答。

その内容について聞くと、「公正証書遺言があったので遺産分割がわりとスムーズに進んだ(50代・女性)」「生前贈与をしてもらっていたが、これについては相続税がかからなかったので、大幅に節税できたと思う(50代・男性)」「親との相談で書類関係・預金関係のリストを作ることができたこと(70代・男性)」と、やっておけばよかったと後悔している人が挙げた内容と同様の結果となりました。

万が一、相続の準備を何もせずに親が他界してしまい、金融資産を把握できない状況に陥ってしまったらどうしたらいいのでしょうか。また、残されたその資産はどうなってしまうのでしょうか。相続税に詳しい税理士・中川義敬さんに聞きました。

「財産調査によって、預貯金であれば金融機関に照会をかけ、株式や債券などは証券保管振替機構(通称:ほふり)に情報開示請求することで、金融資産はおおむね発見できます。ですが、それでも見つけられなかった場合には、残念ながら永久に塩漬け状態となり、相続人の財産にはなりません」。そういったことにならないように、生前に遺言書を作成したり、遺産整理をしておく必要があるといいます。

相続の話になったら節税対策も忘れずに

とはいえ、両親ともに健在だと話題にするのが難しい相続の話。どう切り出したらよいのでしょうか。

「両親が元気なうちに家族間で円満に話し合いをしておきたいというスタンスで、話し合いの場を設けるのがよいと思います。たとえば、将来、相続税がどれだけかかるのか不安に思っていることを伝えたり、相続人が複数の場合には家族間で揉め事を起こしたくないので、財産分与に関して両親の考えを聞きたいと切り出してみてはいかがでしょうか」

またその際に併せて話し合っておきたいのが相続税対策について。生前に対策を講じることで大幅に節税できる可能性があります。その方法について中川さんに聞きました。

「たとえば、贈与を使った対策であれば、年間110万円までの基礎控除内での贈与や、基礎控除が2,500万円まで拡大される相続時精算課税制度、住宅取得等資金贈与や教育資金の一括贈与が有効です」。また生命保険の活用もおすすめだといいます。「保険金は相続人1人当たり500万円まで相続税が課税されないので、その非課税枠分の保険に加入するのも効果的です」。

もし不動産を所有しているなら、「小規模宅地等の特例の条件を整えておくことも非常に重要です」と中川さん。「一定の条件で土地の相続評価額を最大80%減額できるため、節税対策には欠かせません」。

「まだ大丈夫」と、つい後回しにしがちな相続の話。やっておけばと後悔しないように、今のうちから家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。

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