雪深い池田町の最深部・冠山で雪洞泊 鱈にカニ…厳冬期の雪山山頂で海鮮鍋に舌鼓【ふくいのそと遊び】

雪洞の中でまったりと長い夜を過ごしました
雪庇の踏み抜きに注意しながら進みます
ジャンクションピークから望む冠山
せっせと雪を掘り進め、広々とした雪洞が完成
冠山山頂で記念撮影
翌日は打って変わっての悪天候

 桜のたよりも届くころですが山はまだまだ雪がたっぷり。

 今冬は山の積雪量が多く、例年よりも長く雪山がたのしめそうだと常連のみなさんと話しています。加えてこの連休中は再びの雪予報(町なかは雨ですが標高の高いところは雪!)雪山好きにはなんともありがたい春です。

 そんなこんなで?!うららかな春ですが今回も雪山レポートをお届けしたいと思います(そしてまだまだ雪山レポはきっとつづきます(^o^;))。

 2月26日~27日、雪洞泊で冠山(1256.6m)に行ってきました。

 メンバーはリーダーМ田会長、T橋、K子、服部(いずれもベルグラ山の会所属)。

 無雪期の冠山は多くの登山者でにぎわう人気の山ですが、それもこれも登山口となる冠峠までの林道を車で走ることができるから。冬は雪深い池田町の最深部。国道417号線が閉鎖されるとむやみに登山者を寄せつけない昔の姿になります。

 ベルグラ前会長は日帰りでしたが、今山行の目的は雪洞泊。一泊二日の予定です。

 大好きで敬愛するK子さん(相性“おKちゃん”)が食糧の計画・事前準備を引き受けてくださり晩ごはんはお鍋の予定とのこと。たのしみたのしみ。

 気象情報では1日目は晴天で風速5~6mとほぼ無風状態。新雪ラッセルで汗をかきそう。2日目は打って変わっての荒天予報。気温によっては雨になる可能性もあるので替えの衣類等も備えていく(雪よりも雨やみぞれの方が身体の熱を奪われる)。

 雪山泊の基本装備としてスコップ、ツェルトは全員が各自携行、大人4人がゆっくりくつろげるよう大きめの雪洞を掘る予定なので床部に敷く銀マットは大きめサイズを3枚。各自がシュラフの下に用意するマットはエア式ロール式にかかわらず耐寒性の高いもの。ランタンとローソクはT橋くんと私が担当してつねの雪山テント泊の2倍量。コンロやガス缶も予備をおおめにして臨みます。

 当日朝5:20朝倉水の駅集合。4人が車一台に乗り合わせて池田町へ。車内で「空が明るくなるのが早くなったねえ」「やっぱり池田町の雪の量はすごい」

 取りつき部に登山届のポスト等は当然ありません。コンパス(Compass。登山アプリのひとつ。)を利用して登山届提出。

6:10 除雪終了地点に駐車。 装備を確認し積雪量がおおいためワカン装着。

6:40田代第三トンネル手前から田代尾根にとりつく。 想定どおりの深い新雪。T橋くんの先頭ラッセルがつづく。「いいトレーニングで嬉しいです!」と笑顔。心から言ってくれていて頼もしい。

9:30林道との交差地点(900m) すこし右に巻くようにして突っ切る

11:35県境ジャンクションピーク(1156m) このあたりから目指す冠山が姿をあらわし美しい。 おKちゃんがつぶやく「・・・なんてしあわせ」という言葉が耳にここちよい。

12:00雪洞適地を選定し昼食。

12:50食後、宿泊装備は雪洞適地にデポ※1し、アイゼン&ピッケルで出発。 冠平を左下にみながらのトラバースが過ぎると危険個所がなくビクトリーロード。 先行するM田会長とT橋くんが立ち止まり握手を交わしている。ああ、あそこが山頂なんだ。

13:40冠山山頂(1256.6m) 二人の握手姿がいかにも山ヤらしく気持ちのよい姿だったのでおKちゃんと「私たちも握手してもらおう!」4人それぞれに握手を交わし記念写真。 無雪期だと山頂から見下ろせる岐阜県の徳山ダムが見えるかな、と一瞬思ったけれど冠山の山頂は狭い。雪庇に乗るのは絶対さけたいので徳山ダムに未練なし。

14:20雪洞適地にもどり各自補給したのちに雪洞を掘りはじめる M田会長とT橋くんが堀りすすめ、おKちゃんと私は堀りだされた雪をせっせと後ろへと放りなげる。

 作業すること1時間半で広々とした雪洞が完成。

 まだ日差しが背中に暖かく風もないので出来あがった雪洞の外でうれしくてビールで乾杯。これがほんっっっっっっっとに美味しい。

 乾杯をたのしんだら雪洞内に銀マットを敷きつめ各自の荷物を雪洞内に。

 出入口穴にはツェルトを垂らし、その前に雪のブロックを積みあげて風よけにすると冷気の吹込みがなくてなんとも快適。

 壁面には適所に棚がしつらえらてあり(雪

なので壁面に凹みをつくってある)、ランタンやローソクを設置すると洞内が暖かみのある光でみたされた。

 ローソクは灯りとしての役割にくわえて一酸化炭素中毒予防の目安として据置※2。

 おたのしみの晩ごはんは、なんと海鮮鍋。

 澄んだお出汁には鱈!そしてまさかまさかのカニ登場!

 まさか雪山、しかも厳冬期の冬山でお魚やカニに出会うとは・・・

 でも考えてみると保冷剤いらずの冬山だからこそ持ちあげられるといえます。

 納得。おKちゃん!後輩たちはしっかり学びましたよ!

 古新聞をそれぞれの膝前にひろげてカニをむしゃむしゃ、ほじほじ。

 お鍋をおいしくいただいたら白飯投入、溶き卵を回しかけて〆の雑炊。

 おなべはキレイに空っぽ。ごちそうさまでした。

 ながい夜長は温かい飲み物やM田会長持参のウイスキー、T橋くんがたくさん持ちあげてくれたおつまみをいただきながら、たわいもない話題やつれづれ語りの時間。

 おKちゃんの「下界でわざわざ飲み会にいく気はないけど、こういう時間があるのが山泊のいいところ」とのセリフに皆揃ってそうだそうだと頷きあいます。しあわせな空間時間。

20:00就寝 寒くないどころかあたたかくてシュラフから頭も肩も出してくぅくぅ熟睡。

6:00起床 そとは雪が舞いはじめている。

6:40朝食 これまたおKちゃんがお野菜たっぷりのスープパスタを作ってくれました。 おなかにも心にもやさしい味わいが沁みます。

7:30撤収。雪洞は残しておくと大きな落とし穴になり危険なため、上から踏み壊します。

8:00下山開始 足元が雪にガボッてバランスを崩すと倒されそうな強風、降雪もはげしくなり視界が非常にわるくなる 昨日のトレース(踏み跡)は完全に消えており、コンパスで適時確認しながら進路をとる。

11:00下山

■今回の備忘録 ・水分補給に雪を活用しようと反省 私は山の高い低いや季節に関係なく白湯がすきなので、今回はTHERMOS山専ボトルの900mlを携行。雪質もきれいだし共同装備のガス缶の数に余裕があると思い、休憩ごとにごくごく飲みたいだけ飲んでいたらあっという間に空っぽに。雪山で行動中にガスを出すことはまれ。油断せずに山専ボトルからは飲みたい量の半分のお湯をコップに注ぎ、そこに雪をくわえて嵩増しするべきだった。※1 デポは登山用語のひとつ。登山において『〇〇をデポして・・・』という場合、装備の一部をルート途中においていくこと。装備=荷をかるくすることで急峻なピークを往復する際の体力的負荷を軽減することが目的。結果として安全性を高めることにつながるが、最低限必要なものの選定が肝要。また、登山口へのアプローチに使用する車・オートバイ・自転車等を都合のよい地点に置いておく場合にも使用する言葉。語源はフランス語の「dépôt」。※2 ガスバーナーは酸素不足でもゴーッと燃焼してしまうが、ローソクは酸素が不足すると炎が痩せ視覚的に一酸化炭素中毒予防に役立つ。(登山用品店「遊山行」=福井市 服部佐和子)

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