【MLB】鈴木誠也は“3割20本”は可能 イチローら指導の名伯楽「最も期待値が高い右打者」

カブスの入団会見に臨んだ鈴木誠也【写真:盆子原浩二】

通算2038安打の新井宏昌氏は2013年から2015年まで広島の1軍打撃コーチを務める

広島からポスティングシステムを利用した鈴木誠也外野手の移籍先がカブスに決まった。5年総額8500万ドル(約100億5000万円)の大型契約を結んだ日本の4番はどのような成績を残すのか。オリックス、ソフトバンク、広島で打撃コーチなどを歴任した新井宏昌氏は「これまでメジャー挑戦した右打者でも最も期待値が高い」と太鼓判を押している。

南海、近鉄で通算2038安打を放ち名球会入り、“イチローの恩師”としても知られる新井氏は2013年から2015年までの3年間、広島の1軍打撃コーチを務めた。当時、新人だった鈴木を指導するなど、和製大砲になるきっかけを与えた指導者の1人だ。

日本人打者がメジャーで最初に苦しむのは「動くボール」への対応。新井氏は「これまでの打撃を変える必要は全くない。どの選手にも言えるのですが一番大事なのはタイミング」と語る。日本人投手とは違い投球フォームやリリースポイントなど独特な“間”のある外国人投手たちに、いかに早く慣れるかが鍵とみている。

振り子打法を辞めたイチロー、すり足気味にフォームを変更した大谷翔平を例に出し「彼らも対応するためにいち早く打ち方を変えた。どれだけ力を持っていてもタイミングを取れないとバットは振れない」と指摘。日本と違いチーム数も多く、選手の入れ替わりが頻繁に行われるため「1年目のほとんどは初対戦になる。初見の投手をいかに攻略できるか」とポイントを挙げた。

「これまでメジャー挑戦した右打者に関して言えば最も期待値が高い」

もっとも、昨季まで6年連続で打率3割&20本をマークした打撃は高く評価している。一発だけではなく、ボールを引きつけ右中間方向へ強い打球を打てる技術は十分に通用すると見ている。「右の強打者は引っ張りがちだが、彼はそうじゃない。右方向にも打てるからこそアベレージも残せている。“本当の右打者”としてメジャーで数字を挙げられるのか楽しみ」と大きな期待を込めている。

これまで日本人野手の右打者では井口資仁、城島健司、新庄剛志らがいるが、日本の4番としても活躍し、満を持してメジャーの舞台に立つ鈴木に求められるものは高い。新井氏はダイエー時代に井口や城島を指導し、米国での姿も見てきたが「これまでメジャー挑戦した右打者に関して言えば最も期待値が高い」と語る。

そして、右と左で違うがタイプ的には福留孝介と被るという。ある程度の長打力を備え広角に打てる打撃、強肩と広い守備範囲。なにより鈴木は27歳の若さでメジャー挑戦できたのも大きく、まだまだ伸びしろは十分だ。

福留は2008年のメジャー1年目に打率.257、10本塁打58打点、12盗塁をマークしたが「孝介(福留)以上の活躍はできる。カブス側も3割20本は期待しているし、早い段階でタイミングさえ掴めば十分に可能」と見る。キャンプ、オープン戦で結果を残し、シーズンではカブスの主軸として活躍する姿を新井氏は心待ちにしている。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

© 株式会社Creative2