新庄監督が「ファン投票打線」から得た収穫 “現実”知った悔しさが「次につながる」

日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】

8回に打者9人で一挙5点を奪って逆転勝ちした

■日本ハム 6ー4 DeNA(オープン戦・19日・札幌ドーム)

日本ハムの新庄剛志監督は19日、本拠地・札幌ドームで行われたDeNAとのオープン戦で、就任時から構想を掲げていた“ファン投票打線”を実行した。その打線は中盤まで湿っていたが、8回に一挙5得点を奪って逆転勝ち。ビッグボスには大きな収穫があった。

ファン投票でスタメン決定、さらに打線は“人気順”。3月25日の開幕まで1週間を切った時期では“異例”の試みだった。選手らも、スタメンを知ったのはビジョンに映し出されたとき。新庄監督は「1~9番までなかなかおもしろかった」と笑った。

しかし4回までわずか1安打。5回に佐藤の適時二塁打でようやく1点を奪ったが、打線が機能したとは言い難い。それでも1-4の8回に打者9人の猛攻で5点を奪って鮮やかに連敗を4で止めた。打点を付けたのはヌニエス、石井、アルカンタラといずれも途中出場選手だった。

この“ファン投票打線”についてビッグボスは「ファンに選んでもらった期待に応えたい、前に出ていく気持ちを大事にしたい」と狙いを明かす。「目立ったら、陰で練習とかし始めるんですよ、不思議と」。ファンの人気を実感することで得る力を強調した。

代打告げられ悔しがる今川が「印象に残った」

一方、選ばれなかった選手の様子について「悔しがっていた。俺言ったもん、“人気ないんだね、君”って」と冗談めかして振り返りながら「活躍してインパクトを与えて人気が出る努力もしていきなさいと」と説く。同点適時打を放った石井が「ちょっと悲しかったですけど、切り替えて自分の仕事をするだけだなという思いで臨みました」と話したように、ベンチスタートの選手たちにとっても効果を生んでいた。

さらに新庄監督が「印象に残った」と話したのが5番に座った今川だった。名前が呼ばれたときには一礼してファンに感謝の思いを表していたが、3打数無安打。8回の好機で代打を告げられた。「めちゃくちゃ悔しがっていて、あの顔が次につながる。(代打の)ヌニエスも打ってくれたので、その競争がいい方向につながっていけばいいなと思う」。少年時代からファンクラブ会員だった25歳は期待に応えられなかった思いを痛感しているだろうが、それも推進力になるということだろう。

試合後には「うれしいね。ファンたちが選んでくれた打線で勝てて、今日はうれしい」と繰り返したビッグボス。突飛に感じられたプランから生まれた“相乗効果”に、確かな手応えを得ていた。(町田利衣 / Rie Machida)

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