試練を乗り越えたチップ・ガナッシ02号車キャデラックがセブリング12時間を制す/IMSA第2戦

 3月19日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦セブリング12時間の決勝レースがアメリカ、フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われ、直前にドライバーラインアップの変更があったキャデラック・レーシングの02号車キャデラックDPi-V.R(アール・バンバー/アレックス・リン/ニール・ジャニ組)が総合優勝を飾った。WEC世界耐久選手権開幕戦セブリングとの“ダブルヘッダー”で今戦に臨んだ、小林可夢偉駆る48号車キャデラックDPi-V.R(アリー・キャデラック)は総合6位で完走している。

 2022年ウェザーテック・スポーツカー選手権とシリーズ内の耐久カップ、IMSAミシュラン・エンデュランスカップ(IMEC)の第2戦として開催されたセブリング12時間レースは、現地時間19日(土)10時10分にスタートが切られ、まずは前日の予選でポールポジションを獲得した01号車キャデラックDPi-V.R(キャデラック・レーシング)がホールショットを奪う。

 しかしわずか5分後、セバスチャン・ブルデーがステアリングを握る01号車がシフトトラブルのため緊急ピットイン。いきなり1ラップダウンとなり、コース復帰後もトラブル解消のために作業を重ねたことで、チップ・ガナッシ・レーシングの一角が最序盤に勝負権を失うことになった。

 ポールシッターの戦線離脱後、堰を切ったように各クラスでトラブルに見舞われる車両が続出する。そんななか最高峰カテゴリーのDPiクラスでは、10号車アキュラARX-05(コニカミノルタ・アキュラARX-05)が最初のルーティンピット作業後に総合首位に浮上し、これに31号車キャデラックDPi-V.R(ウェーレン・エンジニアリング・レーシング)が喰らいついていく展開となる。

■小林可夢偉組キャデラックも優勝争いにからむ

 スタートから2時間半後、10号車と31号車の首位争いが続く最中に48号車キャデラックがピットに戻り、ホセ-マリア・ロペスから可夢偉にドライバーチェンジして出ていく。直後48号車はジャッキアップ中のタイヤ空転とピットレーンスピード違反のペナルティが科され、可夢偉が2度ドライブスルーペナルティを消化していく。

 アリー・キャデラックにとって幸いだったのは、直後にファン・パブロ・モントーヤ駆る81号車オレカ07・ギブソン(ドラゴンスピードUSA)が6号車デュケインD08・ニッサン(ミュルナー・モータースポーツ・アメリカ)の単独スピンに巻き込まれるかたちでクラッシュを喫し、このアクシデント処理のためにフルコースイエロー(FCY:IMSAの場合はセーフティカー導入を意味する)が出されたことだ。おかげで2分近く開いたトップとの差を縮めることに成功している。

 レース中盤はコース上でのアクシデントが多発しFCYが相次いで導入された。これにより各クラスとも上位陣の間に大きなギャップが生まれず、ピットストップごとに首位が入れ替わっていく展開が続く。DPiクラスでは31号車と10号車、そこにピットタイミングがずれた48号車が加わる。

 レースが落ち着き始めた終盤の8時間過ぎ、展開に変化が訪れる。実質トップを走っていた10号車が、ピットレーンの走行位置を間違えるミスでペナルティを受けて後退。代わって2番手となった02号車キャデラックが見た目上の首位48号車に迫ると9時間目のピット作業後に約8秒のリードをとり、クラス首位に浮上した。一方の48号車は10時間目を迎える直前に、左フロントブレーキにトラブルを抱え優勝争いから脱落してしまう。

 また、気温が下がってきた中盤以降、アキュラ勢がキャデラック各車に後れを取るようになり、10号車と前戦デイトナウイナーの60号車アキュラ(メイヤー・シャンク・レーシング)が表彰台圏外へ。これと対照的に序盤は鳴りを潜めていた5号車キャデラックDPi-V.R(JDCミラー・モータースポーツ)が総合2番手に浮上してくる。

■失いかけた優勝をふたたび手繰り寄せたバンバーの走り

2022年IMSA第2戦セブリング12時間 決勝暫定結果(PDFが開きます)
02号車キャデラックDPi-V.R(キャデラック・レーシング)と10号車アキュラARX-05(コニカミノルタ・アキュラARX-05)
JDCミラー・モータースポーツの5号車キャデラックDPi-V.R

 レースの残り時間が1時間15分となった段階で約23秒のマージンを持っていた02号車だったが、バンバーがアウトラップで13号車デュケインD08・ニッサン(AWA)と接触し、相手をスピンさせてしまったことでドライブスルーペナルティを受け、首位のポジションを失ってしまう。

 トップに立った5号車と2番手02号車のギャップは約5秒。バンバーは自身のミスを取り返すべく1周ずつ差を詰め、レース残り1時間の時点でテール・トゥ・ノーズに持ち込むと、わずか2分後にライバルを攻略。再度首位に立った。

 しかし一難去ってまた一難、02号車キャデラックは直後に21号車フェラーリ488 GT3 Evoと軽い接触がありスピンを喫す。これでふたたび3秒のビハインドを負うことになったバンバーだが、ル・マンウイナーのスピードはベテランのリチャード・ウエストブルックを凌いだ。彼はアクシデントの約10分後、フィニッシュまで残り45分のタイミングで5号車を交わすと、最後のピットストップを経て今度こそ首位を守り抜き12時間レースのトップチェッカーを受けた。

 トリスタン・ボーティエが最終スティントを担当した5号車キャデラックは6.471秒差で総合2位に。3位には31号車が入り、キャデラック勢がセブリングの表彰台を独占する結果となった。アキュラ勢最上位は4位の10号車。可夢偉組48号車キャデラックはトップから5周遅れの総合6位でフィニッシュしている。

■ほぼ全時間帯で接近戦が繰り広げられたGTDプロ

 LMP2クラスは、ポールポジションからスタートし、レース中盤以降クラス首位を守ったPR1/マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07・ギブソン(ベン・キーティング/ミケル・イェンセン/スコット・ハファカー組)が後続の1周差つけて優勝した。

 LMP3クラスはショーン・クリーチ・モータースポーツの33号車リジェJS P320・ニッサン(ジョアオ・バルボサ/ランス・ウィルシー/メルテ・ヤコブセン組)がクラス優勝を飾り、GTDクラスではターン1でタイヤバリアにヒットしたシーンも見られた、チェティラー・レーシングの47号車フェラーリ488 GT3 Evo(ロベルト・ラコルテ/ジョルジョ・セルナジョット/アントニオ・フォコ組)が予選4番手からの逆転勝利を収めている。

 創設から2戦目を迎えたGTDプロクラスは、ポールシッターの62号車フェラーリ488 GT3 Evo(リシ・コンペティツィオーネ)がパワーステアリングのトラブルで序盤に姿を消すなか、コルベットを中心にして複数台によるトップ争いが繰り広げられた。

 レース中盤には24号車BMW M4 GT3(BMW MチームRLL)や14号車レクサスRC F GT3(バッサー・サリバン・レーシング)などがクラス首位に立ったが、スタートから7時間目以降はGT3仕様にデチューンされた3号車シボレー・コルベットC8.R GTD(アントニオ・ガルシア/ジョーダン・テイラー/ニッキー・キャツバーグ組)が優位に立ち、最後は63号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo(TR3レーシング)を従えてトップチェッカーをくぐってみせた。2台のギャップは4.438秒だった。
 
 GTDプロ最後の表彰台のひとつは、レース最終盤に3番手を争っていた14号車レクサスがストップしたことで、クラス4番手から順位を上げた97号車メルセデスAMG GT3(ウェザーテック・レーシング)が獲得している。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の次戦第3戦ロングビーチは、4月8~10に開催される。IMECの次戦はシリーズ第6戦、6月3~4日に開催されるワトキンス・グレン6時間だ。

PR1/マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07・ギブソン
ショーン・クリーチ・モータースポーツの33号車リジェJS P320・ニッサン
コルベット・レーシングの3号車シボレー・コルベットC8.R GTD(左)
チェティラー・レーシングの47号車フェラーリ488 GT3 Evo

© 株式会社三栄