鉄道模型ファン「聖地」5月末閉店へ 国内屈指のHOゲージレイアウト

広いスペースでは全国から訪れる愛好者が鉄道模型を走らせる(彦根市大東町・「ライブラリースペース 和」)

 愛好家たちが鉄道模型の運転を楽しむ「聖地」として知られる滋賀県彦根市の施設「ライブリースペース和(なごみ)」が、5月末に閉店する。一般的な規格の模型「Nゲージ」より一回り大きい「HOゲージ」用のレールは最長55メートルと、国内屈指。名残を惜しむ鉄道ファンが連日全国から訪れ、自慢の列車を走らせている。

 16両の新幹線が、壮大なレイアウトを駆け抜けていく。大阪から来場した大学生はお気に入りの列車の走行に満足げだ。顔をレールに近づけ、スマートフォンで新幹線の雄姿を動画に収めた。店外で見学できる窓から親子が迫力の走りを楽しんでいた。

 施設があるのはJR彦根駅前、平和堂が経営する「アル・プラザ彦根」6階(大東町)。施設の吉丸和成代表(65)によると、西日本最大級の約180平方メートルの広さに「HO」5路線、「N」16路線を設置する。利用者が鉄道模型を持参し、コントローラーで動かすシステムだ。

 オープンしたのは2006年。愛好者で4年前に亡くなった吉丸さんの父が、鉄道好きだった平和堂名誉会長の故夏原平次郎さんから「店に人を集める日本一の鉄道模型のレイアウトを作ってみい」と声を掛けられたのがきっかけだった。

 張り巡らされたレールは、新幹線や貨物列車など長編成に対応できる。長く一直線に敷かれたレールがこだわりだ。吉丸さんは「父がレイアウトを作った。鉄道好きな地元の高校生らが手伝ってくれた真っすぐなレールの美しさは他にはない。思い出は尽きない」と振り返る。

 吉丸さんは開店前と終業後の計3時間、総延長約2.5キロのレールを念入りに掃除する。繊細な模型を傷めないためだ。リピーターは約3千人。土日は予約が必要なほどの人気ぶりだった。賃料は夏原さんの厚意で安価だったが、改装に伴う契約見直しで、吉丸さんは1月末に閉店を決めた。

 半年に1度、仲間と訪れる愛好歴50年の大島聡さん(59)=愛知県豊川市=は「大きな列車が好きで、HOゲージが楽しめる店は少ない。なんとか残せないか」と訴える。

 利用は5月末までキャンセル待ちの状態という。同店0749(27)7234。

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