<社説>養育費不払い問題 自治体の支援が不可欠だ

 浦添市がひとり親世帯を対象に実施したアンケートで、回答者の約6割が養育費を受け取っていないことが分かった。県全体、全国でも同様の傾向にある。 養育費は子どもの成長に必要なものだ。離婚したとしても双方の親が責任を持って果たすべき義務の一つである。ただ支払い能力や法的手続きなど、当事者だけで解決が難しい側面があるのも確かだ。

 それでも第一に考えねばならないのは子どもの成長を保障することである。国が進める関連法の整備に伴い、自治体が当事者の金銭的負担、督促などに係る支援を実施することが不可欠だ。

 県のひとり親世帯等実態調査(2018年度)によると、養育費を全く受け取っていないのは母子世帯で68.2%に上る。厚生労働省が5年おきに発表するひとり親に関する実態調査(16年度)でも、母子世帯の56%が養育費を受け取ったことがないという。

 父子世帯も受け取っていない割合が多いが、男性のほうが収入が多いことなどが背景にあるとみられる。

 課題は経済的に格差があり、困窮する母子世帯が養育費を確実に受け取れるかだ。厚労省、浦添市の調査からは当初から養育費の取り決めをしていない人が約6割いて、関わりたくない、相手に支払う意思または能力がないといった理由が目立つ。

 県が実施した沖縄子ども調査(21年度暫定値)では、ひとり親世帯の63.3%が困窮世帯に当たるという。この中には就労機会に恵まれない人も多く含まれるだろう。だからこそ双方の親が責任を持って子の養育費を確実に負担しなければならない。経済的な理由で進学を諦めるなど、子どもの学ぶ機会が奪われることがあってはならない。

 シングルマザーの貧困の背景に養育費不払いがあるとみて、政府も法制審議会(法相の諮問機関)の議論を通し、支援の在り方を検討している。20年4月施行の改正民事執行法では、勤務先が不明であっても自治体や年金機構などに問い合わせて銀行口座などを把握できるようにした。法務省は山口県宇部市などを不払い解消研究事業の実施主体に選定し、公正証書作成への公費負担、弁護士による相談を受け付けている。

 兵庫県明石市では公費による養育費立て替えと同時に第三者による債権回収を実施する。神奈川県藤沢市では22年度から強制執行に必要な経費を公費で助成する。

 沖縄は人口千人当たりの離婚率が2.36(20年、厚労省人口動態総覧)で全国平均の1.37に比べ突出している。離婚に伴う経済的な問題は沖縄の社会的課題といえる。

 調査を実施した浦添市の松本哲治市長が言う通り、養育費不払いは「家庭の問題でなく社会全体の問題」なのである。子どもの学びと未来を保障するためにも、早急に自治体が対策を取るよう促す。

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