【MLB】鈴木誠也の覚醒に繋がった「ヘッドの使い方」 名伯楽が与えた本塁打増の“キッカケ”

広島からポスティングシステムを利用しカブスに移籍した鈴木誠也【写真:荒川祐史】

新井宏昌氏は広島の1軍打撃コーチとして2015年に鈴木誠也を本格的に指導

広島からポスティングシステムを利用しカブスに移籍した鈴木誠也外野手がついにメジャーの舞台に立つ。2012年ドラフト2位で入団してからは着実に力を付けカープの主砲、そして日本の4番にまで成長した。高卒4年目でレギュラーに定着する“きっかけ”を与えたのがオリックス、ソフトバンク、広島で打撃コーチなどを歴任した新井宏昌氏だった。

新井氏が広島の1軍打撃コーチに就任したのは2013年。この年に鈴木は高卒1年目ながら1軍デビューを果たし11試合に出場している。「1年目の1軍はまだ体験入部みたいなもの。本格的な指導はなかったが質のいいラインドライブの打球を打っていた。光るものはありました」と、その素質に注目していた。

本格的に指導を行ったのが高卒3年目を迎え97試合に出場した2015年だった。試合前の早出練習では強化選手の1人として連日、打撃を磨いた。一番のポイントは「バットのヘッドの使い方」。それまでは叩きつけるライナー性の打球が多く「角度の付いた打球はなかなか打てなかった」と振り返る。

2016年に29本塁打とアーチを量産、そこから6年連続で3割20本を記録

付きっきりで教えたのは「右の腰を来たボールにぶつけていく」こと、そして、アッパー気味のスイングをイメージさせヘッドを動かす反復練習だった。これが少しずつ形になってくると、綺麗な放物線を描く打球が増え、同年は5本塁打を記録。新井氏はこの年限りで退団することになるが、翌2016年に鈴木はレギュラーを獲得し29本塁打とアーチを増産させた。

「飛躍するアイデアになったのかもしれません。私が退団してからも石井(琢朗)コーチも見てくれていた。彼自身も筋力を付け体も大きくなっていた。多くのことをプラスにして翌年の成績につながったんでしょう」

2016年からは6年連続で打率3割20本をマークし、球界を代表する打者に成長。今シーズンはロックアウトの影響もあり少し遅れる形となったが、ついにメジャーの舞台に立つ。新井氏は「若くして中軸を打ったことで責任感も人一倍ある。明るくて現代っ子のような感じ、元気な好青年は変わらない」とエールを送る。

昨年、ア・リーグMVPを獲得した同学年のエンゼルス・大谷翔平投手の存在も大きい。「メジャーで支えになるは大谷の活躍でしょう。パワーだって負けていない。『俺もやれる』と大きな目標になれるはず」。日本が世界に誇るのは大谷だけじゃない、2022年は鈴木誠也が全米に名を轟かせる番だ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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