【新型コロナ】クラスター発生、川崎の特養ホーム 施設内療養「対応にも限界ある」

クラスターが発生した特別養護老人ホームのレッドゾーン内部。床から天井まで間仕切りが張り巡らされている=2月中旬、川崎市(施設提供)

 新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大に伴い、1月以降の第6波では高齢者福祉施設でクラスター(集団感染)が多発し、入所者が亡くなるケースが相次いでいる。医療逼迫(ひっぱく)も相まって、感染した入所者を職員が看病する「施設内療養」も常態化。入所者と職員計28人が感染し、対応に追われた川崎市内の特別養護老人ホームの施設長は「入所者が亡くなることも覚悟した。職員は医者ではなく、対応にも限界がある」と改善の必要性を訴えた。

 川崎市内の特別養護老人ホームで職員の感染が発覚したのは1月下旬。その後も検査のたびに判明し、10日間で入所者22人、職員6人の合計28人にまでクラスターが広がっていった。

 感染した入所者は70~100歳代で、皆持病を抱えていた。5人は市保健所が調整して入院はしたが、搬送まで3時間待たされたり、遠方の厚木市の病院まで運ばれたりした。

 施設に残る17人の中には、血中の酸素飽和度は90%台前半で食事はおろか、水を飲むことさえままならない人、声掛けにも応じずぐったりしたままの人もいた。

 「苦しい…」。ベッドに横たわる入所者に目をやるが、施設には解熱剤がある程度。職員の感染も防がねばならず、日勤1人、夜勤1人の少人数で感染者のケアに回り、「弱っていく様子をただ見守るしかなかった」という。

 「このままじゃ死んでしまいます」。2月上旬、施設長は市保健所に頼み、訪問診療のドクターを手配した。「すぐに点滴を打って」。医師は施設に到着するなり、慌てて中和抗体薬や酸素を投与して回った。症状の重い3人の家族には「覚悟してください」と伝えたほどだった。

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