【高校野球】16イニング無失点“浦学のコナン”が試合中ブルペン入りの訳 7回10Kで8強入り

大会6日目の第2試合は浦和学院が和歌山東に7-0で快勝した

1回はセットポジションで投げ、攻撃中はブルペンへ

第94回選抜高校野球大会は24日、阪神甲子園球場で大会6日目が行われ、第2試合の2回戦では浦和学院(埼玉)が和歌山東に7-0で圧勝。今大会一番乗りでベスト8進出を決めた。エースの左腕の宮城誇南(こなん)投手(3年)は、7回を2安打10奪三振無失点に抑え、2安打完封した1回戦の大分舞鶴戦を合わせて16イニング無失点。「序盤は調子が良くなかった」と言いつつ、優れた修正能力を見せた。

ストレートが走っていなかった。初回はセットポジションで投げ、2回から本来のノーワインドアップに戻した。味方の攻撃中にブルペンで投球。いずれも、森大(だい)監督から「上半身に頼り過ぎて突っ込みがちになっているぞ」と指摘された点を修正するための試行錯誤だった。

思うような球を投げられなくても、相手に付け入る隙は見せない。6回の先頭打者に内野安打を許すまで、無安打1四球に封じていた。「悪いなりに変化球を使って緩急をつけられたことが、抑えられた要因だと思います」と納得の表情。直球も回を追うごとに納得できる球が増えていった。

宮城は身長173センチ、体重73キロと投手としては小柄。ストレートの球速はほとんどが130キロ台で、この日は1度も140キロを超えることはなかったが、スライダーと時折投げるカットボール、チェンジアップで相手にタイミングを取らせないのが身上だ。

「試合中に投げながら修正できるようになったのは、監督が替わってから、完投させてもらえる機会が増えたから。その成果が出ました」と31歳の若き指揮官に感謝する。チームを30年間率い、春夏を通じて甲子園へ22度導いた森士(おさむ)前監督が昨夏限りで退任。部長を務めていた長男の大監督が就任している。

心がけた速いテンポ…森監督「テンポとリズムは、常日頃から投手のテーマ」

速いテンポで投げることも心がけた。森監督は「テンポとリズムは、常日頃から投手のテーマとして指導しています。調子が悪い時も、速いテンポで最少失点に抑えて帰ってこようとすることは、前監督時代から取り組んでいる“浦学”の伝統ですから」と説明した。

宮城は78球で降板し、8回から浅田康成(3年)、9回は金田優太(3年)に継投。森監督は「宮城以外の投手を投げさせることができて良かった。うちには5人の投手がいて、誰を投げさせても遜色はないと思っています」と話す。“1人あたり1週間500球以内”の球数制限を意識した面もあった。控えの2人に甲子園のマウンドを経験させることができたのは、準々決勝以降に生きてくるかもしれない。

狙うは2013年の選抜以来となる、春夏を通じて2度目の全国制覇だ。当時のエースは現ロッテの小島和哉投手。左腕が再び浦学を頂点へ導き伝説となるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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