西武の山賊打線は「昔みたいにガンガンとはいかず」 トロイカ体制で目指す“改革”

西武・平石洋介打撃コーチ、辻発彦監督、松井稼頭央ヘッドコーチ(左から)【写真:荒川祐史】

無死二塁から犠打→犠飛での得点に「意識が高くなってきた」

昨季最下位から巻き返しを期す西武は25日、本拠地ベルーナドームでリーグ王者のオリックスを迎え撃つ。オープン戦は7勝7敗1分の勝率5割(12球団中7位)。昨季2軍監督だった松井稼頭央氏を1軍ヘッドコーチ、ソフトバンクの打撃コーチを務め名伯楽と評判の高かった平石洋介氏を1軍打撃コーチに迎え、辻発彦監督との新トロイカ体制が誕生。「つなぐ野球」へ舵を切り、“山賊打線”が生まれ変わろうとしている。

今年最後のオープン戦となった21日のヤクルト戦(ベルーナドーム)では、4回に源田の先制3ランが飛び出したが、辻監督がより手応えを感じたのは、5回に1点を追加した場面だった。先頭の9番・愛斗が右翼フェンス直撃の二塁打を放つと、続く1番・鈴木が初球に送りバントを決め、すかさず三塁へ進めた。そして2番の外崎が右犠飛を打ち上げた。「いい投手からはなかなか点を取れないから、ああいう攻撃が重要になる。開幕へ向けて、選手たちの意識が高くなってきた」と指揮官は満足そうにうなずいた。

辻監督はオープン戦期間中、自分を犠牲にしての進塁打、送りバント、ワンヒットで一塁から三塁を奪う走塁、犠飛といった比較的地味な作業を重視していた。

15日の日本ハム戦(ベルーナドーム)では2回1死1、2塁の場面で、金子がカウント0-2からチェンジアップを辛うじてバットに当て、三ゴロに倒れたものの走者を二、三塁に進めた。これが続く鈴木の四球、森の押し出し四球、中村の走者一掃3点二塁打へつながり、ビッグイニングとなった。辻監督は「金子がしぶとく二、三塁にしたこと。これも大きな仕事ですよ」と称えた。

ベンチで選手を迎える西武・平石洋介打撃コーチ、松井稼頭央ヘッドコーチ、辻発彦監督(左から)【写真:荒川祐史】

「昔みたいにガンガン打って、というわけにはいかないはず」

驚異的な爆発力で2018、19年にリーグ連覇の原動力となった山賊打線も、昨季はリーグ4位のチーム打率.239、チーム本塁打112、同5位の521得点に終わった。そこで辻監督は「昔みたいにガンガン打って、山賊だとか、何点でも取れるというわけにはいかないはずです。今年は(松井)ヘッドや平石とも話し合って、野手たちが打線として全体で攻めていけるように、選手たちへ話をしてもらっています」と明かす。

オープン戦の戦いぶりを「ベテラン2人(栗山、中村)が引っ張っる中で、みんなが一生懸命走ることに力を入れてくれている」と総括。その上で、「これを1年間通すことが難しい。負けが込むこともあるだろうが、気持ちを切り替えて常に前向きに頑張ってほしい」と開幕を見据えた。

首脳3人は非常に仲が良さそうだ。松井ヘッドにとって平石コーチはPL学園高の5年後輩に当たる。試合中にベンチ内で寄り添い、テレビ画面に3人で抜かれることも多い。

21日の試合では、昨季わずか2本塁打の源田が本塁打を放つと、3人そろって一様に頭を抱え、ファンをホッコリさせた。「もうホームランを打っちゃった、もったいないな、シーズンに取っておけよ、ということですよ」と笑った辻監督。トロイカ体制が山賊打線を変え、チームを上位進出へ導くか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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