新潟県村上市・胎内市沖における洋上風力発電について、漁業や環境などへの影響を県や市、専門家が協議

第2回再エネ海域利用法に基づく協議会(胎内市産業文化会館)

再エネ海域利用法における促進地域の指定に向けて新潟県が設置する協議会が24日、第2回の協議会を開催した。洋上風力発電に係る漁業や環境などへの影響について、専門家から情報提供が行われ意見交換など協議を行った。

洋上風力発電を導入した場合に懸念される、漁業面や環境面、さらに海上無線などの通信面などへの影響について、各分野の専門家が調査事例を説明した。

公益財団法人海洋生物環境研究所海洋生物グループの三浦雅大氏は、洋上風力発電に係る漁業影響調査について説明。漁業への影響において懸念される点である、建設時の杭打ち作業で発する水中音からの漁業への影響について調査事例を紹介した。水中音による魚類への物理的影響を調査した結果、魚種によって影響の違いがあったと説明。カレイ類など浮袋がないか小さい魚種には影響が比較的少ないという調査結果を示した。

また、洋上風車の合成音をサケに聞かせる実験が行われた岩手県の調査事例では、サケの遊泳速度が速くなったなどの反応があったことを紹介。そのうえで「風車の稼働音によって魚がいなくなるという事例は今のところない」(三浦氏)と説明した。

一方で、国内外の洋上風力発電所においては、様々な魚介類が集まるようになる「漁礁効果」が確認されているという。構造物の水中部分が人口礁として機能し、魚介類の新たな生息地として、今まで見られなかった魚などが来たという事例を紹介した。

調査事例のまとめとして三浦氏は、漁業対象生物に顕著な影響が認められた事例は少ないとした一方、調査事例がある欧州に比べて漁法や漁業対象生物が多様なため、地域ごとに懸念事項が異なることに注意が必要とし、「地域特性に応じた検討を個別に行うことが望ましい」と提言した。

漁業への影響について、新潟県の産業労働部創業・イノベーション推進課の田中健人課長は、より地域の実情を踏まえた具体的な議論を行うため、実務者会議を別途設けることを提案。構成メンバーや設置要領などは県に一任したうえで、実務者会議を進めて行くことで承認した。

また第1回協議会の質疑に関して村上市の高橋邦芳市長は、基金を創設することを提案。高橋市長は「発電事業者と漁業者が共存共栄していくといった形として、基金は一つの方法」と話し考えを示した。

胎内市の井畑明彦市長は、「事業者から基金がなされた場合は、漁業に対して役立てられるのみならず、地域活性化など様々な主体に還元がされていくことが求められる。管理、使い道については透明性や明確性をもって具体化が図られていくことが大事」と話した。

今後さらに協議会を重ね、再エネ海域利用法における促進地域の指定を目指す。

胎内市の井畑明彦市長(写真左)と村上市の高橋邦芳市長(写真右)

© にいがた経済新聞