「火事だ」若年性認知症の男性が老夫婦救出 消防が感謝状贈呈へ

男性が救助活動を行った火災現場=2021年12月、佐野市内

 昨年12月に佐野市内の住宅が全焼した火災で、現場近くに住む若年性認知症の男性(59)が住宅内にいた老夫婦を救出していたことが24日までに、関係者への取材で分かった。市消防本部は25日、男性に感謝状を贈呈する。

 認知症の人たちを支援するNPO法人「風の詩」(佐野市田沼町)の永島徹(ながしまとおる)理事長(52)は「認知症と診断されても、人の持つ可能性は失われないと改めて教えてもらった」と話している。

 同本部などによると、自宅から見えた煙で火事に気付いた男性は「火事だ」と大声で何度も叫び、火災現場の住宅から出てきた住人男性を安全な場所に誘導。その後、煙が充満する住宅に入り、住人女性を救出した。2人を近所の家に預け、初期消火活動に参加したという。

 一連の活動は、佐野署の調書に記載があったことなどから判明。下野新聞社の取材に対し、男性は「煙がすごくて、『早く助けなきゃ』の一心だった。今思い返すと震えるが、2人が無事で本当によかった」と振り返る。現場に居合わせた近隣住民は「火の周りが早かったので、そのまま中にいたら危なかったと思う」と話した。

 同法人の永島理事長は、認知症の人の活躍の場が広がることを期待する。「その人に合ったアシストをすることで、本来持つ力以上のことも発揮できる」と力を込めた。

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