ガレージ56枠から2023年ル・マン参戦のNASCAR車両は「ハイブリッドが前提条件」とACO会長

 2023年のル・マン24時間レースに出場を目指すNASCARの“Next-Gen”車両であるシボレー・カマロZL1は、ハイブリッド・パワートレーンを搭載する可能性が高い。ACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長は、ハイブリッド搭載が特別枠“ガレージ56”でのエントリーの前提条件であることを認めている。

 既報のとおり、ヘンドリック・モータースポーツは3月17日、IMSAとWEC世界耐久選手権の併催イベントとなったアメリカ・セブリングで記者会見を開き、NASCAR、シボレー、IMSA、グッドイヤーとのコラボレーションにより、フランスの耐久クラシックの特別枠にNASCARの車両をモディファイして参入する計画を表明している。

「モディファイされた車両」の技術的な詳細は明らかにされなかったが、記者会見でフィヨンはそれがハイブリッドになるであろうことを示唆した。

 会見の後、フィヨンはSportscar365に対し、これまで革新テクノロジーを特徴としていた“ガレージ56”へのこの種のエントリーに際しては、ハイブリッド・パワートレーンの採用が前提条件となることを、改めて認めた。

「ガレージ56は、イノベーション(革新)に捧げられた車両だ」とフィヨンは述べている。

「それは、チャンピオンシップでポイントを獲得することができない、唯一の車両だ。我々はそこに、革新的なものを必要としている」

「ジム(・フランス/NASCAR会長)が、NASCARには新たな世代の車両(Nex-Gen)があると私に言ったとき、彼は2023年にガレージ56としてこのクルマでエントリーするという、このクレイジーなアイデアを思いついた。私はすぐに、熱狂した」

「ハイブリッドシステムを搭載する、このNASCARの新世代車両は革新的であり、これがNASCARの未来だと思う」

セブリングで行われたNASCARとIMSAの合同記者会見の様子

 ハイブリッドのコンポーネンツについて尋ねられた際、IMSAプレジデントのジョン・ドゥーナンは技術的な詳細を明らかにしなかった。

 NASCARは2024年のシーズンに間に合うよう、LMDhで見られるものと同様のスペック・ハイブリッドユニットをNext-Gen車両に搭載すべく、作業に取り組んでいることが知られている。ル・マン24時間におけるトライアル・ランが実現すれば、その開発テストベッドとして機能するかもしれない。

「現時点では、ここ(セブリング)で車両の正確な仕様について話し合う機会がある」とドゥーナン。

「スティーブ・フェルプス、スティーブ・オドネル、ジョン・プロストとその他のメンバーがNext-Gen車両に対して行ったことは、すべてのブランド、とくにシボレーとその設計チームに対し、非常に多様性を持って提供されている」

「今後数週間から数カ月以内に、仕様とエンジン、およびすべてのディメンジョンについて話し合う。やるべきことがたくさんある」

「ル・マンやデイトナ24時間、そしてセブリングのようなイベントは、人々やマシンをテストする絶好の場所だ。パワートレーン、新しい燃料、タイヤ、ハイブリッドなどをね」

「これらのイベントが、自動車産業にとってのラボラトリー(研究所)であることは、疑いようがない。最終的にはロードカーへと採用される革新技術が、これまでもレーストラックでテストされてきた」

「ジム・キャンベルとシボレーにおける彼のチームは、何年にもわたる、その輝かしい一例だった。そのコルベットは、ロードカーの開発のための絶対的なラボラトリーだった」

■NASCAR界の“スター”参戦の可能性と障壁

 このプログラムのドライバーはまだ発表されていないものの、チームオーナーのリック・ヘンドリックは、少なくとも1名の現役NASCARカップ・シリーズドライバーを含む、“ミックス”ドライバーラインアップを望むと述べている。

「我々はそれについて、たくさん話し合ってきた。カレンダーがどうなるか次第だし、そのスケジュールで誰がドライブ可能なのかを待つだけだ」とヘンドリック。

「IMSAのドライバーには、ル・マンの経験を持つ者がたくさんいる。とくにシボレーが関与することで、ドライバーの面では我々はカバーしてもらうことができる。だが可能であれば、そのなかにひとり、カップ・ドライバーがいることを望んでいる」

 ジミー・ジョンソンにその可能性があるかどうか尋ねられたヘンドリックは、可能性があることを示唆し、またジェフ・ゴードンの名前も挙げた。

「ゴードンをダイエットさせ、そしてジミーを取り戻すつもりだ!」とヘンドリックはジョークを飛ばした。

「まだジミーとは話をしていないが、競合する何かが彼になければ、やってくれると信じている」

IMSAの長距離耐久戦にアリー・キャデラックの48号車キャデラックDPi-V.Rで参戦するジミー・ジョンソン

 NASCARのスティーブ・フェルプス社長は、スケジュールの観点からは「考えないといけない」と述べており、ル・マンでのラインアップの一部となる現役カップ・シリーズドライバーに対応するため、2023年のカレンダーを調整する可能性があることを示唆した。

 2022年のカレンダーでは、ル・マンはソノマ・レースウェイでのNASCARのイベントとバッティングしているが、その次の週末には空きがある。

 この他、ル・マンの決勝前週に開催されるテストデーにおいて周回をこなすことを、ACOがルーキードライバーに対して長年課してきている点も、ハードルとなるかもしれない。

「我々はスケジュールの観点から、それを検討しなければならないだろう」とフェルプスは2023年のカップ・シリーズのカレンダーについて述べている。

「ひとつ良いことは、我々が今回ドライバーの発表について話すためにこの場に来ているわではない、といことだ。それはリックと彼のチームが見つけ出すことだ」

NASCARカップ・シリーズに参戦するヘンドリック・モータースポーツの“Next-Gen”車両、シボレー・カマロZL1(アレックス・ボウマン)

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