「忘れない」思い胸に 那須雪崩事故から5年 大田原高で慰霊碑除幕式【動画】

慰霊碑を除幕する遺族ら=26日午前10時10分、大田原高

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中の大田原高の生徒7人と教諭1人の計8人が亡くなった雪崩事故が27日で発生5年となるのを前に、遺族と県教委、県高体連による合同追悼式が26日、同校で初めて営まれた。同校に今月建立された慰霊碑の前で、参列者は8人の冥福を祈った。「那須雪崩事故を忘れない」。慰霊碑に刻まれた言葉を胸に、事故の風化の防止を誓った。

 合同で追悼式を行うのは昨年に続き2回目。今年は会場を事故現場近くから大田原高に移し、遺族ら関係者52人が参列した。

 午前10時半。司会を務めた高瀬淳生(たかせあつき)さん=当時(16)=の母晶子(あきこ)さん(55)が8人の名前を読み上げた後、黙とうをささげた。

 追悼の辞で、鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん=当時(17)=の母恵理(えり)さん(54)は「(悠輔さんは)本来ならこの春、新社会人になるはずだった。見たかったな、スーツ姿。8人の輝く笑顔が見たい」と、癒えることのない悲しみを吐露した。

 荒川政利(あらかわまさとし)県教育長は慰霊碑に向かい「皆さんの尊い命を守ることができず、無限の可能性を秘めた将来を奪ってしまった」と謝罪し、「二度と大切な命を奪うことのないよう再発防止に取り組む」と誓った。

 登山講習会を主催した県高体連の丸茂博(まるもひろし)会長も「改めて取り返しの付かない事故を起こしてしまったことへの痛恨の念に駆られる」と沈痛な面持ちで語った。

 献花では、慰霊碑に語り掛けるように手紙を読み上げたり、ここ1年の出来事を報告したり、遺族が思い思いの形で8人を悼んだ。

 追悼式の開催に先立ち、慰霊碑の除幕式が行われた。慰霊碑建立委員会のメンバーで、佐藤宏祐(さとうこうすけ)さん=当時(16)=の父政充(まさみつ)さん(52)は「碑銘には風化させない、8人を忘れない、再発防止の誓いなどの思いが詰まっている。メッセージを発信することで、安全安心な学校づくりが進む」と明かした。

© 株式会社下野新聞社