慰霊碑に刻まれた「忘れない」雪崩事故遺族が残したかったもの

除幕された慰霊碑を見詰める遺族の奥さん(右)と毛塚さん=26日午前10時15分、大田原高

 那須雪崩事故で亡くなった栃木県立大田原高の生徒と教諭の8人を追悼し、事故の風化防止を図るための慰霊碑が26日、大田原高に建立された。「学校にあることが一番の教訓になる」。遺族は校舎の前に建つ慰霊碑をいとおしそうに見つめ、亡くなった息子たちに優しく語り掛けた。

 「8人が登った山の稜線(りょうせん)のようだね」。山岳部第3顧問だった毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん=当時(29)=の父辰幸(たつゆき)さん(69)は除幕式後、親しみを込めて碑をなでた。

 同校の植木淳(うえきあつし)校長(59)によると、石は同校OBの男性が山の形の石を選び、寄贈した。石は茨城県産の白御影石、土台は那須町産の芦野石を用いた。

 奥公輝(おくまさき)さん=当時(16)=の父勝(まさる)さん(50)は「優しい色で柔らかい感じがする。公輝、学校だよ」と語りかけた。

 慰霊碑は約3年半かけての建立だった。学校側は当初、「事故の反省を残すべきではない」「8人の名は刻まない」と説明。碑には「命」と刻み、命の大切さを訴えるものとしていた。

 遺族は、8人の生きた証しを残し、風化防止を訴えることに意味があるとし、話し合いは難航した。

 植木校長の着任後、遺族の代表者や学校関係者で慰霊碑建立委員会を設立。話し合いの結果、遺族側の強い意向を尊重することになった。

 この日の除幕式には学校関係者も出席。「那須雪崩事故を忘れない」と刻まれた碑銘を眼に焼き付けた様子だった。鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん=当時(17)=の父浩之(ひろゆき)さん(56)は「生徒や教諭の部活動への安全意識が変わってほしい」と願った。

 設置場所は正門近くで、教員や生徒の目に入る。植木校長は「今いる生徒、これから入学する生徒の安全安心を確立する」。その誓いを新たにしていた。

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