菅田将暉『ミステリと言う勿れ』が生み出す2つの感情。整の言葉に救われるわけ

菅田将暉さん主演で話題のドラマ『ミステリと言う勿れ』。田村由美さんの原作マンガへの期待を裏切らない大ヒットとなった本作が、視聴者の心を揺さぶった理由とは?

菅田将暉さんが天然パーマの大学生・久能整(くのう・ととのう)を演じるドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)。

民放公式テレビポータルサイト「TVer」の見逃し配信再生数の民放歴代最高記録を更新するなど、「第67回小学館漫画賞(一般向け部門)」に選ばれ、累計発行部数1400万部を突破した田村由美の原作漫画と引けを取らないほど注目を集めています。

コミックスと同様に、なぜドラマ『ミステリと言う勿れ』が歴史を塗り替えるほどの支持を得た理由。それは本作が視聴者の心に2つの感情を生み出したからではないでしょうか。

現代人の悩みを映し出す登場人物への共感

一つは登場人物たちの抱える悩みに対する共感。

本作のPVに登場する“事件の謎も人の心も解きほぐす”というキャッチコピー。その言葉のとおり、作中では悩みを抱える、様々な境遇の人物が整の周りに集まります。第1話(episode. 1)に登場した、妊娠した妻と喧嘩をした池本優人(尾上松也)、男性の多い職場になじめず辞表を出すか迷う風呂光聖子(伊藤沙莉)、さらに事件の犯人も、整の前では心の奥底に抱いていた心情を明かします。

仕事で多忙な日々のなかで家族との付き合いに悩む池本や、女性であるが故に男性からなめられているのだと感じる風呂光など、『ミステリと言う勿れ』には、まるで現代を生きる視聴者の姿を映したような登場人物たちが数多く存在します。

仕事と家庭の折り合わせや女性の社会進出など、2022年を迎えたわたしたちにとって身近な悩みを抱える登場人物から、多くの視聴者は自身と似た境遇の存在がいることを知り、共感を覚えたはず。

様々な悩みを登場人物に覚える共感は、多くの視聴者から支持を得た要素なのでしょう。

整の発想の豊かさに気付かされること

そしてもう一つは整の発想の豊かさ、彼特有の物事の捉え方です。それぞれが抱える思いを開示する登場人物たち。彼ら彼女らに対し、整は淡々と“おしゃべり”を繰り広げます。

第2話(episode. 2前編)に登場したのは、子どものころに万引きを強要されるいじめを受け、盗難を繰り返した駄菓子屋がつぶれたことに罪の意識を抱く「淡路一平」(森永悠希)。彼に対し整は欧米の一部でいじめられている人ではなく、いじめている人に対しカウンセリングを受けさせようとすることを話しました。

いじめている方が病んでいるという捉え方を知った淡路は「俺のせいじゃなくて……?」とこぼし、涙を流します。

淡路と同じく第2話に登場した、海外でヒッチハイクをしながら暮らす元カレに、小さな町工場で働く自分をバカみたいだと言われた露木リラ(ヒコロヒー)。彼女に対しては町工場で働く露木のように、毎日コツコツと働く人がいるから元カレは海外へ行くことや生活することができているのだと語りかけます。すると感情的に話していた露木は落ち着きを取り戻したのです。客観的な事実を提示することによって説得力を増す整の言葉、常々いろいろな事象に対し思考を巡らせる整特有の捉え方。整だからこそ口にすることのできる“おしゃべり”によって悩みを抱えていた登場人物の心は解きほぐされ、その表情は穏やかなものとなるのでしょう。

いじめられている生徒がカウンセリングを受けることの多い現代の日本に対し、疑問や言葉にできないモヤモヤを抱えていた人。

自分の好きなことを生業にする人や大きな成果を残した人にスポットライトが当たることが多いため、自分は会社に足を運び続けているだけなのではないかと感じていた人。そんな人々のなかには、整の言葉が自身を承認することのできるきっかけにつながった人も多いと思います。登場人物の抱える悩みや境遇に覚える「共感」。事件の真相もさることなら、整が提示する事実や物事の捉え方の「新鮮さ」。2つの感情こそ、本作がわたしたちの心に生み出してくれたものだと感じます。

菅田将暉さんの演技も相まって、本作は整の人間味あふれる様々な顔が映像として表現されたドラマ作品になったと言えるはず。より解像度の高まった整のキャラクターも本作が多くの支持を得た要素なのかもしれません。(執筆:あんどうまこと)

ドラマ『ミステリと言う勿れ』放送情報

【公式】『ミステリと言う勿れ』特報第二弾解禁!22年1月月9

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■キャスト

久能整 菅田将暉

風呂光聖子 伊藤沙莉

池本優人 尾上松也

ライカ 門脇 麦

犬堂愛珠 白石麻衣

天達春生 鈴木浩介

青砥成昭 筒井道隆

犬堂我路 永山瑛太

他■スタッフ

脚本 相沢友子

音楽 Ken Arai

プロデュース 草ヶ谷大輔 熊谷理恵(大映テレビ)

演出 松山博昭 品田俊介 相沢秀幸

主題歌 King Gnu 『カメレオン』

(ソニー・ミュージックレーベルズ)

制作・著作 フジテレビ 第一制作部

■原作

『ミステリと言う勿れ』

田村由美

(小学館『月刊フラワーズ』連載中)■公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/mystery/

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