菅前首相も常連、多くの甘党魅了 横浜の甘納豆老舗、99年の歴史に幕

店主の網頭英治さんは、自慢の甘納豆の量り売りなどでお客の注文に応えてきた=横浜市南区のおもや甘納豆店

 1923(大正12)年からハマ名物の甘納豆を提供してきた老舗「おもや甘納豆店」(横浜市南区吉野町)が今月末、創業99年の歴史に幕を下ろす。「始まるときがあれば、終わるときが必ずある」と3代目店主の網頭英治さん(64)。最後の甘納豆を秤(はかり)に載せるまで、菅義偉前首相をはじめ、多くの甘党を魅了してきた自慢の味を守り抜く。

 横浜市営地下鉄吉野町駅の近く、林立するビルの谷間で下町情緒あふれる店舗が目を引く。

 花豆やあずきなど7種類の甘納豆が並び、朝10時の開店と同時に押し寄せた常連客らは「本当に閉めるの?」と寂しそうだ。

 色とりどりの甘納豆は目で見ても楽しい。一口かむと柔らかくくずれ、程よい甘さが口に広がる。「閉店はとてもショック。誰にあげても喜ばれた」と60代女性の常連客は名残惜しそうに店を見上げた。

 大正時代に東京・渋谷で創業。甘納豆職人だった祖父が店を開き、横浜・野毛への移転を経て、戦後の49年に現在の吉野町に店を構えた。そこから73年間、変わらぬ味を届けてきた。

 「おいしいよと言われるとやっぱりうれしい。その言葉が支えだった」。職人気質の網頭さんが、静かな口調で感謝を表現している。

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