新電力子会社「破産」でホープが失ったもの ~ 会社分割から3カ月での「破産決議」~

 東証マザーズと福証Q-Boardに上場する(株)ホープ(TSR企業コード:872231720、福岡市)に注目が集まっている。
 電力小売事業(新電力)に参入して業績を急拡大してきたが、電力調達価格の高騰で一転して窮地に陥った。2021年12月の持株会社化に伴い会社分割した(株)ホープエナジー(TSR企業コード:137083300、福岡市)は、電力会社からの送配電取引契約を解除され、破産することを2022年3月22日に公表した。負債総額は概算で約300億円にのぼる。
 ホープエナジーが担っていた電力小売はグループの中核事業で、グループ売上高の93.1%(2021年6月期)を占める。売上高の9割以上を喪失し、屋台骨が揺らぎかねない状況で、信用回復に向けた取り組みが急がれる。

ホープ

‌ホープの入居ビル(TSR撮影)

新電力参入で急拡大

 ホープは2005年に時津孝康代表が創業。休眠会社の「時津建設」を商号変更し、事業をスタートさせた。
 当初は、自治体が保有する遊休資産・未利用スペースへの広告等を提案するサービスを主力としていた。その後、自治体情報誌の制作請負や情報配信アプリ作成など、公共サービスの請負で事業を軌道に乗せ、2016年6月に東証マザーズと福証Q-Boardに上場した。
 上場1年目の2017年6月期の売上高は17億7,400万円にとどまっていたが、2018年3月以降、一大ブームとなっていた電力小売事業に参入すると飛躍的に業容は拡大した。
 成長の背景は、それまで培ってきた自治体向けビジネスのノウハウが生きたことだ。自治体や公共施設の入札などを主戦場として売上高を急拡大し、2021年6月期の売上高は前期比2倍以上の346億1,556万円に達した。

電力価格高騰で債務超過転落

 業績急拡大の裏側で、2021年は新電力業界に嵐が吹き荒れた。
 1月以降、日本卸電力取引所(JEPX)での電力取引価格が高騰したのだ。電力の調達コストが跳ね上がり、自社で発電設備を持たない新電力は調達コストが急上昇した。さらに、こうした企業の多くが多額の不足インバランス(電力の調達ができなかった場合、電力会社に支払うペナルティ)を背負い込んだ。
 業界大手の(株)F-Power(TSR企業コード:297969072、東京都)が2021年3月に会社更生法を適用して注目を集めた。ホープもまた65億円もの不足インバランス料金の負担を抱え、損失計上で債務超過に転落した。

ホープ

「未払い」続きで電力会社から契約解除

 ホープは債務超過の解消を目指し、新株発行などの資本増強を進めた。懸案の不足インバランス料金は、分割弁済で2021年12月にようやく支払いを完了した。ところが、これと前後して同年10月以降、JEPXでの調達価格が再び高値で張り付き、逆ざやによる赤字はさらに拡大することになる。
 2022年6月期中間決算(連結)で80億円以上の債務超過に陥り、借入金返済の遅延を公表せざるを得ない状況に陥り、資金繰り悪化が露呈した。監査法人からは四半期レビューで「結論不表明」を突き付けられた。
 こうしたなか2021年12月、持株会社体制へ移行し、新電力事業は分割会社のホープエナジーが承継した。このほか、自治体向け広告事業など2社の事業会社も発足し、持株会社ホープを含め、4社体制となった。
 ただ、窮状を脱することはできず、資金不足から借入金の返済はおろか新たに発生した不足インバランスの支払いも厳しくなった。ホープのリリース資料によると、未払いが続いたことで、すべての一般送配電事業者との託送供給契約が解除された。万事休すとなったホープエナジーは、新電力事業の継続が事実上不可能となり、破産に追い込まれた。

電力価格の高騰で、新電力はビジネスモデルそのものが揺らいでいる。

 とはいえ、上場企業が利用者や債権者を抱えたまま、グループ売上高の9割以上を占める事業子会社を破産させるケースは前代未聞だ。なにより会社分割して、わずか3カ月しか経っていない。
 また、ホープはホープエナジー向け債権600万円について、取立不能による損失見込みを公表した。ただ、ホープエナジーの債務については「保証等の債務負担行為を行っていない」と公表。自社に債務請求が及ばないことを示唆している。
 今後のグループ各社の事業はどうなるのか。東京商工リサーチの取材に対し、ホープの広報担当者は「現時点においては、ホープとグループ会社は通常通り事業を継続してまいります。まずはホープの債務超過脱却を最重要経営課題として事業に取り組んでまいりたいと考えております」と回答した。
 一方、ホープは3月24日、臨時株主総会を開催し、決算期の変更を可決した。債務超過による上場廃止の猶予期間が2023年3月末まで先延ばしされることになる。5月中旬には新たに「債務超過の解消に向けた計画」を開示するとしている。
 ホープは、ウルトラCともいえる策で、お荷物事業と子会社の整理に打って出た。
 だが、ホープエナジーの電力契約先は全国約5,000施設におよぶ。これらの施設は年度末を目前に控え、新たな電力契約先の確保などの対応に追われる。その大半は自治体や公共施設だ。税金で賄われているため、地域の財源や住民サービスにも関わってくる。
 新電力という足かせは外れたが「身軽」になった代償として、ホープが失った信用はあまりに大きい。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年3月29日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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