マイナンバーカードの保険証利用で患者負担増 4月より 初診21円、再診12円増

 昨年暮れからマイナンバーカードを保険証として使える仕組みが始まったが、この4月からの診療報酬改定で、これを病院の診察時に利用すると患者負担が増えることが分かった。これまで一般に対する明確な説明がされておらず、負担額は少ないものの国民から批判が出そうだ。

医療効率化へ一定の効果は見込めるが‥

 マイナンバーカードの本人認証機能を生かした健康保険証、いわゆる「マイナ保険証」の利用は昨年12月から可能となっているが、4月1日以降に診察時に提示した場合、3割負担の人は初診時に21円、再診時に12円、処方せん薬を受け取る際にも9円上乗せされる。

 これは医療機関への診療報酬が新設されたためで、マイナンバーカードの情報を読み取れる機器などを導入する医療機関の設備投資費をまかなえるようにするのが目的。したがって、実はマイナ保険証を使わずに紙の保険証を提示した場合でも、読み取り可能な端末を導入している医療機関の初診に限り、3割負担の人は9円上乗せされることになっている。

 保険診療の情報を電子認証ができるマイナンバーカードで取り扱えるようにすることで、医療関係者が薬の処方歴、各種検査、健診のデータを紐づけて参照することが容易になり、医療の質向上や効率化に寄与する一定の効果は見込める。これまで病院を変えるたびに同じような検査を何度もすることになるなど、患者にとっても不利益があっただけに、こうした仕組み自体は歓迎されるものだ。しかし医療従事者に対する効果と比べ患者に対する効果は間接的であり、費用負担を求めるならばキャンペーンで利便性ばかりをアピールするだけでなく、負担が生じることを事前に説明すべきではなかったのだろうか。

 厚生労働省は患者に負担を求めることに対し、普及すれば広くメリットがあり、理解されるという見解を示しているが、一部の保険組合、団体からは従来の紙の保険証を提示しても一部で負担を求められることについて戸惑いが広がっており、適用の複雑さもあって混乱を招きかねない情勢だ。

© 合同会社ソシオタンク