集落の墓地を丸ごと墓じまい 「子や孫が面倒見られるか」住民ら決断

共同墓地から移され、佛眠墓に安置された墓石を見る西田さん(左)と森屋住職=南丹市園部町口司・佛名寺

 全国的に墓じまいが増える中、共同墓地を墓じまいした集落が京都府南丹市園部町にある。高齢化と人口流出を背景に、墓地の管理負担が増す将来を見据え、住民の思いがまとまった。墓園関連の団体などによると集落全体でのケースは極めて珍しいという。近くの寺の合祀(ごうし)墓で、21日に法要を営んだ。

 同町口司(こうし)の下口司集落。13世帯の居住者の多くは70~80代で、子どもは数人しかいない。共同墓地は集落で管理してきたが、墓地や途中の道の草刈りなどが重労働で、悩みの種となっていた。「今はまだよいが、子どもや孫の世代が墓地の面倒を見られるのだろうか」。こう考えた農業西田良弘さん(43)が2020年の盆ごろに、集落全体での墓じまいを投げ掛けた。

 墓地のお骨は、近くの佛名寺(ぶつみょうじ)が20年秋に設けた合祀塔墓「佛縁塔(ぶつえんとう)」に移され、彼岸などに経を上げて供養される。適切な管理が見込まれることもあり、集落内に目立った異論はなく、転出した6世帯の了解も得て、21年春の彼岸前に一連の墓じまいを終えたという。墓石は、墓じまい後の墓石を安置する同寺の「佛眠墓(ぶつみんばか)」に移された。共同墓地は更地にした。

 時代の流れに加え、近所同士のつながりが健在で話がしやすい雰囲気があることや、集落外に転出した人との連絡手段があることも役立った。森屋徹全住職(57)は「20年前ならば反対された。逆に10年後であれば、転出者と連絡が付かなくなる。今が行動する時期として良かったのではないか」と話す。

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