【電子デバイスアップデート最前線】進化を続ける電子デバイスによって現実のものとなる次世代の自動車

クルマの世界はIoTの進化とともに様々な電子デバイスが搭載されるようになった。その機能はメーカーによって名称が異っている。そこで、あらためてユーザーにとってメリットのある電子デバイスの機能と役割、その進化について簡単に解説してみよう。

電子デバイスアップデート最前線 スバルのアイサイト搭載車(イメージ)

いまどきのクルマに“ADAS”は欠かせない

『ADAS』はエイダスともエーダスとも呼び、「Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム」を略したものだ。

昨今のクルマにはカメラを含めた各種センサーと、それを動かすためのコンピュータが車両全体を網羅するように組み込まれている。ADASはこのセンサー類を通じて、常に自車の周囲を監視して状況を把握、走行時に危険を察知した場合にはドライバーに警告を発し、必要に応じてハンドル操作やブレーキ操作の補助を行っている。

話題となっている『自動運転』もこの延長線上の機能と言える。最近では従来まで単一の機能だった運転支援や安全装備がADASの領域に組み込まれることで、それぞれが双方向でやりとりを行い、従来以上の効果を発揮するようになってきた。

またADAS領域のほかにも、利便性や安全性を向上させる機能も日々進化しており、その点でも最新のクルマを購入する際にはこれらが標準装備なのか、オプションで装着できるのかをしっかり確認することが重要と言える。

トヨタ 新型ノア/ヴォクシーも「Toyota Safety Sense」を搭載(写真はヴォクシーS-Z)

トヨタの看板モデルであるミニバンの新型ノア/ヴォクシーもトヨタ版ADASの「Toyota Safety Sense(トヨタ・セーフティ・センス)」を搭載する。全車速追従機能付きのクルーズコントロールやレーントレーシングアシストは標準装備だが、より高度な緊急時操舵支援やレーンチェンジアシストなどはオプションで用意されている。

スバルのADAS「アイサイト」を初搭載したスバル レガシーツーリングワゴン2.0GT(2008年)

日本におけるADASの走りといえるのが、スバルの「EyeSight(アイサイト)」。スバルは、運転支援システムのセンサーにコストパフォーマンスに優れたカメラを加えたアイサイトを2008年に誕生させた。アイサイト搭載車は非搭載車に比べて追突事故発生率が84%も減少したという(公益財団法人・交通事故総合分析センター(ITARDA)のデータを基にスバルが独自算出)。当時は販売店に「アイサイトをください」と訪れるお客さんが増えたとか。

クルコンの時代から今やACCが当たり前に

高速道路など自動車専用道で、スイッチ操作ひとつで一定速度の走行ができるのが「クルーズコントロール」。略してクルコンと呼ばれている機能だ。クルコンは車速をセットすればアクセルやブレーキから足を離すことができるので、長距離運転時の疲労軽減などにも効果がある。ただ前走車が急なブレーキ(速度減少)をした際には、こちらも減速(システムオフ)しないと追突してしまう。

これを防止する意味も含めて、前走車との車間距離や速度をセンサー類で常時確認し、“追従走行”するのが、『ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)』だ。

前走車との車間距離を維持するために使用するセンサーの種類はメーカーや車種によって様々。レーダーを活用することで「レーダークルーズコントロール」と呼ぶメーカーもあるが考え方はほぼ同じだ。

しかし、このACCは後付けできない。前述したように昨今は他の安全装備との協調機能としても位置しているので、標準装備されるクルマも増えてきたが、メーカーの工場でオーダー時に組み込む「メーカーオプション」であることは覚えておく必要がある。

この他にも走行中の車線逸脱を警告するLDW(レーン・デパーチャー・ウォーニング)をさらに進化させ、ステアリングに軽く反力をかけることで逸脱自体を未然に防止できるLKAS(レーン・キーピング・アシスト・システム)などもひとつの進化として今後の装着拡大が見込まれている。

ACCやレーンキープ技術などによりハンズオフも可能に(写真は日産のプロパイロット2.0)
BMWもハンズオフが可能に

そしてカーナビの時代は終焉したのか?

「カーナビの時代はすでに終わった?」と書いてしまうと大胆な話だが、従来までのカーナビというのは単純に道案内を行う(その発想自体が古い)ものだった。その後、AV(オーディオ&ビジュアル)機能と連携し、さらにETCやカメラ類との連携により進化してきた。

ゆえに現在ではカーナビではなく、それらを総称して「インフォテインメントシステム」と呼ぶ機会が増えてきた。

各メーカーは独自性を出すために、それらのシステムが持つ機能を前面に押し出してきている。特に音声認識による操作は、これまでもあるものの、今ではインターネットと接続することで外部からの情報をスムーズに入手し、ドライバーにフィードバックできるようになった。

メルセデス・ベンツの「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)」などは、「ヘイ、メルセデス」の音声発話により、目的地検索はもちろん、エアコンの温度調整やインターネットからの情報取得、さらに学習機能によりユーザーごとに最適な設定の提案など、IoTの進化がギュッと凝縮されている。

また本来のナビ機能に関しても、通信を活用することでより正確な渋滞(交通)情報の取得により、目的地までのスムーズな誘導を可能にした。つまりステアリングから手を離さずに音声のみで多くの操作ができることで視線移動も抑えられ、安全運転にも寄与できるというわけだ。

この音声認識に関しては過去にも数度トレンドがあったが、現在はスマホでも高い認識精度が実現できていることもあり、今後クルマにおけるトレンドとなることは間違いなさそうだ。

対話型にまで進化したメルセデス・ベンツの音声認識機能

ADASという運転支援が今後のクルマ選びの鍵に

ここで紹介したように、進化を続けるADASやインフォテインメントシステムはこれからの自動車には欠かせない装備となっている。それこそ「どんなADASやインフォテインメントシステムが積まれているのか? さらにその操作性であるユーザーインターフェイスの仕上がり」は、クルマを選ぶうえの基準であった、エンジンやフットワークのフィーリングとともに欠かせない要素となった。

これからの自動車選びでは、これらの使い勝手もチェックするようにしたい。

[筆者:高山 正寛/撮影:スバル、トヨタ自動車、日産自動車、ビー・エム・ダブリュー、メルセデス・ベンツ日本]

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