ギタリスト・プリンスに興味を持ったら「サイン・オブ・ザ・タイムズ」を聴いて!  リリース35周年 “殿下” のギターをフィーチャーした名曲多数収録、聴くべし!

ギターキッズが目標にしたギタリストのジャンルは?

僕は15歳でギターを始めたが、その頃ギターキッズが目標とするギタリストは、大体2つのジャンルに分かれていた。

1つめはハードロック / ヘビーメタルで、もう1つはクロスオーバー / フュージョンだ。この2つのジャンルには共通点があった。それは「演者と聴き手の趣味が一緒」なこと。ファンの中には自ら楽器を弾く人も少なくなく、聴き手も演者目線で(プレーヤーになったつもりで)演奏を聴く。

実は、同じ音楽ファンでも、聴き手目線で聴く人と演者目線で聴く人では全く違う。ポップスのヒット曲の多くは、聴き手目線の人にとって「素晴らしい」楽曲でも、演者目線の人にとっては「つまらない」楽曲だったりするのだ。もちろん、聴き手目線の人が圧倒的マジョリティだ。

これは「逆も真なり」で、先の2つのジャンルの音楽は、演者目線の人にとって面白くても、聴き手目線の人(つまり一般の音楽ファン)の興味をそそるものでないことが多い。これが、この2つのジャンルがメジャーになりにくい理由の1つなんじゃないかと思う。

印象深いスーパーボウル・ハーフタイムショーでの「パープル・レイン」

前置きが長くなったが、要するに、聴き手目線と演者目線の両者を同時に満足させるというのは、とてつもなく難しいことなのだ。―― その点で、この条件を満たしている稀有な存在がプリンスである。

彼はあまりにもメジャーな存在であるが故に、演者目線の音楽ファンの興味の対象から「条件反射的に」外されてしまった感があるが、実はプレーヤーとしても超一流だ。そのことに気づいていない皆さんには、是非一度、ギタープレイだけに注目して彼のパフォーマンスを観て貰いたい。

例えば、2004年のロックの殿堂(Rock & Roll Hall of Fame)の式典でのことだ。プリンスは、ジョージ・ハリスンへの追悼パフォーマンスで、トム・ペティ、スティーヴ・ウィンウッド、ジェフ・リンらとザ・ビートルズの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」を演奏したが、後半のギターソロの場面(動画では3分27秒あたりから)では、ほとんど彼のワンマンショーと化していた。

2007年のスーパーボウルのハーフタイムショーも忘れがたい。史上初の雨中のパフォーマンスとしても印象に残っているが、激しい雨と風の中での「パープル・レイン」は何とも幻想的であった。曲の後半で「Can I play this guitar?」と言って始まったギターソロ(動画では5分56秒あたりから)はショーのクライマックスだったと言える。

2003年、ローリングストーン誌が過小評価したギタリスト第1位

米国の音楽誌『ローリングストーン』は2003年に「25 Most Underrated Guitarists」を発表したが、1位に選ばれたのがプリンスだった(2位はニルヴァーナのカート・コバーン)。「Underrated」とは「過小評価」されているということである。さらに、僕の好きなランキングサイト『WatchMojo.com』も「Top 10 Underrated Guitarists」の1位にプリンスを選んでいる(2位はラッシュのアレックス・ライフソン)。

2016年にプリンスが亡くなったからかもしれないが、今ようやく彼が素晴らしいギタリストだったことが世間に浸透してきた気がする。それはそれで喜ばしいことだが、その反面、少々寂しくもある。

もし皆さんがギタリスト・プリンスに興味を持ってくれるのなら、1987年にリリースされたアルバム『サイン・オブ・ザ・タイムズ』を聴いてほしい。シングルカットされたタイトル曲をはじめ、「ユー・ガット・ザ・ルック」、「プレイス・オブ・ユア・マン(I Could Never Take The Place Of Your Man)」など、いくつもの曲でギターがフィーチャーされている。

※2018年9月17日、2019年6月7日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 中川肇

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